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今が生死

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2020.07.17
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カテゴリ:読書
西洋芙蓉 日本芙蓉とは葉が少し違います
白い巨塔は山崎豊子さん原作の医学界の内情を描いたセミドキュメンタリーの社会派小説である。映画化されテレビドラマ化も何度も行われ、ラジオドラマ化もなされて文字どうり一世風靡して社会に多大な影響を与えた作品である。主人公の財前五郎氏が教授戦で何人かの候補者としのぎを削って遂に外科学教授の椅子を手に入れるがそれには産婦人科を開業している義父から資金援助を受けてかなりの現ナマを使って2票差で勝利した。教授会でお金で買収があったのでこの選挙は無効だという者がいたが医学部長なども買収されていたのでその意見は無視されて財前五郎は教授として華々しい活躍をしていく。食道噴門部がんの権威でドイツなど海外でも実技指導や講演を行い、世界的にも名声を博していく。しかしドイツに行く直前手術した胃がん患者の胸部レントゲンで影がありそれはがんの肺転移によるものだったのにあえて手術して死期を早めたとして家族に訴えられ裁判になった。一審は無罪だったが2審で注意義務が足りなかったとして有罪になり、最高裁に上告して争うことにしたがその時自身が肝臓に転移している進行胃がんに罹っていることが見つけられ、黄疸になり、虚しく死んでいくという物語である。日本でも世界でも最高の外科手術の腕を持つ医師として世界中から称賛されていた人物の末路であった。
山崎豊子さんは毎日新聞の記者をしていただけに医学界の内情について実に詳しく調べてあると感心した。財前五郎は架空の人物で色々な人をモデルにして形成されているがそのモデルの一人として千葉大学第2外科教授中山恒明さんも挙げられている。氏は34才で教授になったやり手で、食道噴門部がんの権威で外国でも高く評価され財前五郎氏の外観に似ているがその内面は似ていない。財前が訴えられた患者家族は財前が患者を親切に扱わずゾンザイな態度だったことが訴える直接の動機になっているが中山先生はどの患者さんにも優しく、自分の持っている自然治癒力で直すことを説いており財前とは違うと思う。
当事は手術してもらう時に教授にかなりのお金を包むことが一般化されており小説では亡くなった患者さんはそのお金が少なかったように書かれているが中山先生はお金で治療態度を変えるような人ではなかったと思う。しかし当時の教授は最高権力者で博士号を貰いたい若い医者を三下子分のように使い金も集まり威張りまくって王様みたいな存在だったので大金を使ってでも教授になりたかったのだと思う。しかしこの小説のおかげでそれまでは患者さんからお金をもらうことは咎められなかったがその後は患者さんからお金をもらってはならないことがどの病院でも内規で決められた。また教授に三下子分のように使われていた無給医局員も反乱を起こし大きなインターン闘争が展開された。この小説は社会で威張っていた医学界の内面にせまり恥部をさらけ出した小説だが反面教師でその後の医局体制は随分様変わりした。今では権力は教授に全ては集中していない。学問的リーダーではあるが権力者ではなく、友人や兄貴みたいな存在に近い。若手医者が博士号が欲しくて無給で医局で働いていたが今は博士号より専門医の方が重視されるようになり昔の医局体制とはずいぶん違ってきた。時代の流れでありこの小説が世に出たことのみが変革の原因ではないと思うが、そのきっかけを作ったことは確かだと思う。もう財前五郎氏のような医師は現れないと思う。





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Last updated  2020.07.17 14:25:49
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