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2022.01.03
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 私も、気候変動対策については当Blogでも繰り返し言及しているが、ここ一二年、『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著)が注目されている気候危機に関する問題意識については共有できる点が多いものの、同書には違和感を覚える点もかなり見える。           

このたび、その内容に関して2回にわたり「批判的考察」をまとめることにする。
(​人新世の資本論について 全文PDF
 ただ、その内容・要約に関しては松下和夫の簡潔な要領を得たものがあるので、最初に引用しておきたい。

1、京都大学名誉教授・地球環境戦略研究機関シニアフェロー松下和夫 脱炭素大競争時代と『人新世の「資本論」』による要約

・斎藤によれば現代は「人類の活動が地球を破壊する『人新世』(地球危機)の時代に入っており、気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならない」。

・資本主義の本質を見抜いていた晩期マルクスを踏まえれば「唯一の解決策は〈コモン(生産手段の共同管理)〉を基盤にした潤沢な脱成長コミュニズムだ」。 

『人新生の資本論』の論旨(松下の「大胆な」要約)

①気候危機はすでに現実化しており、この状態を放置するとこの社会は野蛮状態に陥る。

②資本主義は、利潤のあくなき拡大を目指してすべてを市場と商品化に巻き込み、自然の略奪、人間の搾取、巨大な不平等と欠乏を生み出してきた。それを変えなければ、解決にならない。気候変動の原因である資本主義の枠組みを維持したままでは、どのような方策も気候変動危機を止めることはできない。

③資本主義の本質を見抜いていたマルクスもそのことを指摘している。晩期マルクスが残した研究ノートを詳細に検討した最近の研究結果(MEGAプロジェクト)によると、マルクスは、資本主義のシステムに代わるエコロジカルで持続可能性を重視した〈コモン〉を自分たちで共同管理するシステムを構想していた。

④これは従来のマルクスの資本論の理解(資本主義による恐慌と失業から社会主義革命が起こり、資本を管理する主体が資本家から労働者に代わり、共産主義社会が実現する)とは異なる。そしてマルクスが最晩年に目指したコミュニズムとは、生産力至上主義を脱却した脱成長コミュニズムである。それは平等で持続可能な脱成長型経済であり、自然資本を含む協同体的富が地域に根差す非営利的で平等な市民により共同で管理される。生産力至上主義を捨てるなら、生産力の高さは、歴史のより進んだステージにいることの証明にはならない。破壊的技術だけを発展させても、意味がないからである。・・・晩年のマルクスは、進歩史観そのものから決別せざるを得ない。史的唯物論はすべてがやり直しとなるのだ。(人新世の「資本論」166) 

⑤私たちは資本主義を脱して、エネルギーや生産手段など生活に不可欠な〈コモン〉を自分たちで共同管理する「脱成長コミュニズム」に進まなければならない。

(具体例は後述)

⑥脱成長コミュニズムの柱は以下の通り。

・使用価値経済への転換:(交換)価値ではなく「使用価値」に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する

・労働時間の短縮:労働時間を削減して、生活の質を向上させる

・画一的な分業の廃止:画一的な分業を廃止して、労働の創造性を回復させる

・生産過程の民主化:生産のプロセスの民主化を進めて、経済を減速させる、ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)により生産手段を〈コモン〉に

・エッセンシャル・ワークの重視:使用価値経済に転換し、労働集約型のエッセンシャル・ワークの重視を

⑦「SDGs(持続可能な開発目標)」でも「グリーンニューディール」でも、成長至上主義がある限り、加速度的に進む環境破壊と温暖化は止められない。先進国で達成したかに見えても、そのツケは途上国に押し付けられるだけである。 
(引用は以上)

2、『人新生の資本論』、その意義と課題(私の切り取り・考察)

​・気候変動に絡めて帝国的生活様式を問題にしている点。資本主義体制そのものを根本から問い直す必要があるという明確な提起。少なくとも、これまでの資本主義の「歴史」において利潤追求は環境の破壊や二酸化炭素の大量排出に繋がってきた。

・資本は「人工的希少性」を生み出しながら発展する。(・・・)いくら経済成長をしても、その恩恵が社会の隅々まで浸透することはないという指摘(253頁)、ブランド化と広告が生む相対的希少性(255頁)等、利潤追求によって暴走してきた資本主義の根本的な問い直しを呼びかける。⇒ 気候危機の解決とこの問い直しは不可分であることを提起。

・共産主義(communism)に対する偏見の払拭に一定貢献し、マルクスの著書(『資本論』や「ザスーリッチへの手紙」)を読みなおす機会になりうる。 

・技術的進歩を過大評価することに対する警鐘。楽観論を戒めることも大切。 

・トヨタなどに典型的な「形だけの環境配慮」を鋭く問題にしていく視点。

平等な共同体の復権やcommonの重要性を指摘。

具体例:市民エネルギーの取り組み(日本でも全国各地で展開)

 生産手段を自分たちの手に取り戻すワーカーズコープの取り組み(262頁)

 270頁では資本論の一節を引用

「社会化された人間、結合された生産者が(・・・資本の)盲目的な力によって支配されることをやめて、これを合理的に規制し、彼らの共同の管理のもとに置くこと(・・・)。この国のかなたに、自己目的として行為しうる人間の力の発展が、真の自由の国が始まる。労働日(労働時間)の短縮は根本条件である。」(引用部分の表現を短縮・若干修正)

・マルクスが(特に晩期)ロシア農村共同体の研究を通して『資本論』をも問い直そうとしていたこと、​精神労働と肉体労働の対立(分業)の克服​、都市と農村の対立の克服について言及していたこと、(308頁)労働者たちの能力の全面的な発展をめざしていたこと、など重要な点をとりあげている。

・バルセロナ(企業や国家を恐れないフィアレス・シティ‐恐れぬ自治体)の画期的な取り組みを例示。同市は草の根の声を市政に持ち込むシステムを整備しつつ、水の権利を「コモン」として奪い返し、一旦民営化された水道事業を「再公営化」。

2020年1月に「気候非常事態宣言」を行い、2050年までに脱炭素化(カーボンゼロ)をめざす。さらに生活協同組合、共済組合、有機農産物消費グループなど「社会連帯経済」を実現し、製造業、農業、教育、清掃、住宅等の分野でも地域住民主導の街づくりが始まっている。

このようなバルセロナの取り組み‐(「コモン=社会の共有財産」を市民に取り戻す取り組み、様々な協働組合の創造)は確かに注目に値する。

〔斎藤が同書で触れている宇沢弘文の社会的共通資本(および内橋克人FEC自給圏)の問題意識にもつながる。:補〕

Q1 宇沢弘文の社会的共通資本とは?

大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、

道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラ

教育、医療、司法、金融制度などの制度資本

などを宇沢は「社会的共通資本」と呼び、これらを市場原理に任せるのではなく公的に(委託された専門家の良心と見識に基づいて)守っていくことが、人間らしくが生きていく基盤となると主張。

Q2 斎藤は、宇沢との違いをどのように説明しているのか?

斎藤によれば、〈コモン〉は専門家任せではなく、市民が民主的・水平的に共同管理することを重視する。そして、最終的にはこの〈コモン〉の領域をどんどん拡張していくことで、資本主義の超克をめざすという決定的な違いがある、という。

めざすべき究極的な目標(理想)としては共感を覚える。

energyの地産地消 ⇒ FEC自給圏に通じる記述(261頁) 

Q3 内橋克人のFEC自給圏とは?

食糧(Foods)とエネルギー(Energy)、そしてケア(Care=医療・介護・福祉等)をできるだけ自給する地域コミュニティ。これを実現していくことが、地域の生存条件を強くし、雇用を生み出し、自立することにつながるという。

例:​山形置賜自給圏

山形県の置賜地方を一つの「自給圏」としてとらえ、圏外への依存度を減らし、地域資源を利用することで地域産業を興し、雇用の確保を実現しようというもの。

 具体的な活動としては、

[1]地産地消に基づく地域自給と域内流通の推進、[2]自然と共生する安全・安心な農と食の構築、[3]教育の場での実践、[4]医療費削減の世界モデルへの挑戦 の4つ。

 もともとは山形県長井市の地域内循環の取り組み(地域で発生した生ごみを堆肥化し、地域の有機農業に活用し、安心安全な作物を食卓に提供するという取り組み)から発展。地域内循環は「街づくりデザイン会議での市民による議論」を経て具体化していった。

ただし、このような取り組みは時間がかかる。そして、議論・実践に時間をかけなければ意味はない。だとすれば、「10年以内にCO2排出量の半減を」という気候危機への対応としては間に合わない。少なくとも、脱成長communismをめざすことと現体制で可能なことは同時進行で精力的に取り組んでいく必要があるのではないか。

確かに斎藤の言う労働者協同組合やバルセロナ等の自治体からの取り組みは貴重。

Q4 しかし、これらの動きによって現行資本主義が根底的に転換されうるのか?

歴史的に積み上げられてきたこれまでの協同組合活動によって、斎藤が問題とする資本主義systemそのものを変えることができなかったことも事実である。

Q 様々な運動(集団的な取り組み)を進めていくための条件は?

「合意」。しかし、気候危機への対応こそが最重要課題と考える人間は全体の何割なのか? そのうち脱成長communismという方針で合意できるのは何割か?「脱成長communism以外にない」という断定は、気候変動に本気で取り組みたいと考える人々を分断することにならないか?

Q欧米の若者を中心とするgeneration leftは脱成長communismを支持している?

例えば米国でサンダーズを支持する若者の多くは、「気候変動対策」と「社会民主主義的な改革」に共感した個人だといえるが、多くが「グリーンニューディール」を否定しているとは考えられない。その点、資本主義体制下での取り組みを米国の若者は否定していない。 

・​生産力主義をマルクス主義から切り離そう​という斎藤の試みは評価できる。これは、『国家と文明』(竹内芳郎著)で展開されている論と共通する視点だともいえる。

・斎藤は選挙によって実現する「改革」を「政治主義」と批判し、意思決定過程における直接民主主義的な運動の意義を強調。​『国家と文明』(マルクス主義の国家論を丁寧に検討し、公私の分裂‐精神労働と肉体労働の分業を乗り越える原理として直接民主主義を提唱)と比べれば感覚的ではあるが、共通する視点でもある。

・斎藤の挙げる例:気候市民会議

 これは、制度的には「大統領制および議会制度を補完するもの」(市民会議自体は決定権を持たない)というのが現状。しかし、直接民主主義的な抗議運動「黄色いベスト運動」(216頁)を機に導入された制度である。この事例を強調することは大切なこと。

〔しかしながら、「人々の欲望を不必要に喚起することは禁止される。」「深夜の営業・・・年中無休もやめればいい」303頁などの記述については誰がどのような手続きで禁止するのか、という疑問も生じる。禁止するかどうかも含めて、幅広く議論し合意形成するのでなければ、斎藤の言う「気候毛沢東主義」になるのではないか。〕 

(斎藤の主張)「資本による包摂が完成してしまったために、私たちは技術や自律性を奪われ、商品と貨幣の力に頼ることなしには、生きることすらできなくなっている。そして、その快適さに慣れきってしまうことで、別の世界を思い描くこともできない。」

⇒上記は「体制変革が極めて困難であること」を示唆するものだ。

『国家と文明』が理論化した「周辺革命の傾向的法則性」​‐成熟した社会よりもその影響を受けた周辺地域から社会変革が成立‐からすると、成熟した資本主義体制においては、構成員の生活・意識そのものがその爛熟した文化に飲み込まれてしまっているため、根本的な変革は極めて困難。大いなる「文化革命」が変革の条件となる。地球環境問題に関してもとことん学習し、消費行動を変えつつその解決に向けての意思を固める、という時間のかかる過程がおそらく不可欠。 

・「全く別のライフスタイルを生み出し、脱炭素社会を作り出す可能性を​技術は抑圧し、排除する​」という斎藤の主張は検証が必要。Life styleの刷新と技術革新を同時に追求することは必要だと思われる。原因‐結果の一方通行ではなく、相互関係がある。
1)資源不足の時代に終わらせるために Part 1 – 鉱物資源の不足がクリーンエネルギーを頓挫させない理由
2)資源不足の時代を終わらせるために Part 2 – ​想像を絶するクリーンエネルギーの豊かさを手に入れる
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上記論文の要約 著者:ナフィーズ・アーメド(Nafeez Ahmedの論文より)

『人新生の資本論』について(2)に続く

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Last updated  2023.09.18 15:55:25
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