カテゴリ:西国三十三所霊場
○第三十一番 近江国蒲生郡長命寺
推古天皇二十七年開基。 推古天皇は聖徳太子の御祖母公。 天皇の体調が悪く、医者が色々治療したがちっともよくならなかった。 太子はひどく心配して、病気治癒を願って、自ら柳で聖観世音を刻みになった。一週間のお祈りで像が光を発し、天皇の体調が速やかに回復した。これが延命観世音の由来。 天皇が太子に命じて堂舎を建立、延命観世音を本尊とし長命寺と名付けた。 弘法大師が空海と名乗り東寺に居た時、腫れ物を患われていた。夢に白髪の老翁が現れて加治なさると、たちどころに治癒した。空海がどちらの方か尋ねると、江州の浜辺に居る者ですと答え、去って行った。 その後数日で全快したので、琵琶湖の辺りを尋ねたが10日探しても会えなかったので、都に帰る途中、琵琶湖の辺りで金づち研ぐ老人を見た。老人に名を尋ねると、あなたが探しているのは私だ、と答えた。 自分は、ここに住んで八千年の白髭の神。ここの水底に五十年前の火事で失われた、聖徳太子が自ら刻まれた観世音がある。あなたの法力で救いだしなさい。私も助力する、と言って白鳩になって飛び去った。 空海は飛び去った方向を拝んだ後、熱心に水底に向かって祈ると、水面が二つに別れ、水中から光とともに観世音が現れ、空海は衣の袖で受け止めた。 村人にこのことを伝えて再び本堂を建立し長命寺の本尊とした。また、空海自ら千手観音を刻んで腹内に尊像を納めた。 天和の頃、疱瘡が流行したが、長命寺に参拝すると観音の霊験で子どもの命が助かった。 心が強く常に観音を念じていた武江の佐々羅三八という浪人が、娘に取り憑いた痘神を屈服させ、証文を取った話。 ○第三十二番 近江国神崎郡石場寺村観音寺 聖徳太子は甲斐の黒駒に乗って、調子丸、秦川勝、跡見市位を連れて、仏法を広めるため全国をまわっていた。 神崎郡の葦原で、聖者様、情けをかけて私たちを苦しみからお救いくださいと、声がした。見回したが姿は見えなかった。助けて上げるから姿を見せなさい、とおっしゃると、畏れ多く、また、見苦しい姿なので姿を現すのはお許しください、お情けをかけてください、と言った。 どんなに見苦しくとも構わないとおっしゃったので、そうであればお許しください、と出てきたのは、身長三尺、頭は人間の女、体は魚だった。この姿を見て、川勝と市位は驚いたが、太子はこれは人魚で珍しくはない、と言った。功徳をもって助けたいので前世を話なさい、とおっしゃった。 恥ずかしながら、私は堅田の浦の漁師で日々殺生をしており、疑いの心があったので神仏三宝を信心することもなく、生死のことも考えず一生暮らした。その報いで海中で、色々な魚や蛭、虫などが集まって私の鱗の間から血を吸いとられ苦しいので、聖者の弔いを受け助かりたいと言った。 どんな法事でもするので望みを話しなさい、とおっしゃっると、それでは千手観世音の像を造って菩提を弔いください。ここに堂舎を建て、後の世に殺生をした者がどうなるのかの見せしめにしてください。御弔いの功力で、将来は観世音の眷属となれるようしていただきたいと、お願いしてそのまま姿が見えなくなった。 それから太子は三尺の千手観世音を刻み、人魚のために御堂を建立し、観音寺と名付けた。太子が近江国に十二ヶ寺建立した寺の一寺である。 救世観音の御化身である太子がご自身で刻まれた本当の大慈大悲の像がこれである。 この功徳で人魚は仏の御加護を得て、死んだ後に観世音の眷属となった印として死骸を浜辺に浮かべたと、太子に夢を見せた。浜に出て見ると人魚の死骸が波で打ち寄せられてきたので、掬い上げて寺に納め、第一の宝物とした。 若狭国風土記にある八百比丘尼となった人魚を食べた者の話。 ○第三十三番 美濃国谷汲山華厳寺 延暦二年開基。 豊然上人開山。 豊然上人がこの地で水に浮かぶ油を知り、質素な庵を構えた。 奥州の大蔵信光が西国三十三所を満願した後、修行し霊木を手に入れた。都で仏師を探していると、旅の宿に童子が尋ね来て身の丈七尺五寸の観世音像を刻んでくれた。奥州に運ぶ途中、美濃国谷汲の辺りで観世音像がひどく重くなり野宿することにした。明け方この山中の出家に託すよう、お告げがあった。辺りを探して出会った僧に十一面観世音像を渡し、僧がいた質素な庵の後ろに堂を建て像を安置した。ここが三十三番の霊場となった。 ・日本三文殊 大和安倍文殊(安倍文殊院) 丹後切渡文殊(天橋山知恩寺) 奥州永井文殊(松高山大松寺) 華厳寺の観世音像は文殊化身の作。 ・西国順礼十ヶの徳 一 火難、水難、横死の難、盗賊の難をのがる 二 悪畜、毒虫、全ての獣にあい死する事なし 三 毒薬、無実の難をまぬがる 四 雷電、落馬の死をせず 五 厄難、熱病、全て流行病を受けず 六 海川、船に乗て風波の難をたまぬかる 七 寿命長久子孫繁盛を守り給ふ 八 諸神諸仏応護し給ふ 九 所願成就せずと言うことなし 十 諸の罪障滅して極楽浄土へ向かうべしとの御誓也 ・普門品に寄せる古歌 観音霊場記図会 大尾 十句観音経 主要参考文献類 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年03月05日 07時34分22秒
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