テーマ:倉庫・運輸(145)
カテゴリ:物流 ロジスティクス
仮想商店街の楽天はアマゾンに物流面で致命的な後れを取っている。 このたび、配送物流分野でアナログな日本郵政グループと、小売り分野でアナログな西友と業務提携を進めていることが報じられた。 日本郵便の配達網を使うのは良いが、ソフトとハードが一体となった巨額を要する物流システムの構築に取り組む覚悟が双方にあるのだろうか? 宅配分野を強化するには、両社の現有資源の活用と新たな資源の構築が必須だ。 …宅配で互いにメリット 2020年12月24日 読売新聞 楽天と、日本郵政グループの日本郵便が、物流事業で業務提携する方向で調整していることが分かった。 インターネット通販「楽天市場」の商品を日本郵便の配達網を使って配送することや、楽天が強みを持つIT(情報技術)を活用した最適なルート配送の実施などで連携するとみられる。 日本郵便側は、郵便物の減少が続く中、新型コロナウイルスの感染拡大などで需要が増している宅配分野を強化する狙いがある。 配達員の不足が続いており、ITを使った物流の省力化も課題となっている。 来年度からの中期経営計画でも、物流分野でデジタル化を進めていく考えを打ち出している。 ― 引用終り ― 楽天は、ウォルマートから見放された西友とタッグを組む。 西友は老朽化した店舗群を抱え、ウォルマートが米国ですすめているRFIDタグ活用やIT化の進展もはかばかしくない。 それなのに今、楽天が西友とタッグを組むワケ 2020年12月24日 ITmedia ビジネスオンライン 小売大手の米ウォルマートが、10年以上持ち続けた西友株式のうち、85%を売却することになった。 20%はネットスーパー事業の提携先である楽天が、65%は米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が持つことになるという。 15%の持ち株は残すが、実態は新たな株主による企業価値向上で、投資回収を少しでも多くするための保有であるといえる。 今後恐らく、ウォルマートが日本における店舗小売ビジネスに関心を示すことはないだろう。 彼らの日本攻略は「失敗」に終わったのであり、“敗戦処理”が終わったら撤退して、回収した資金は自社のECインフラ投資の足しにでもするはずだ。 ●“敗戦処理”のゆくえ いくら西友が「世界のウォルマート」と組んだといえども、こうした地域では、下位勢力にすぎない。 存在感を示すには相当な追加投資を要する状況にあったが、地方の局地戦に追加投資するのは非効率なので、ウォルマートの選択肢にはなかったのだろう。 こうした状況を見れば、今回の投資ファンドKKRの役割が何であるのかは自然と見えてくる。 つまり、ネットスーパーと効率的に連携可能な首都圏に照準を合わせ、その他のエリアについては可能な限り高く換価回収を行った上で、企業価値を高めて「首都圏店舗網+ネットスーパー事業」というパッケージを楽天に譲り渡すことだ。 残る15%出資をできる限り回収して、ウォルマートの“敗戦処理”は終結することになるのだろう。 今後は増大する物流コストを誰が負担するのかも大きな問題になるだろう。 売上拡大を目指すEC側にすれば、コストを消費者に負担させることは避けたいに決まっているが、店に行かなくて届けてくれるという便益の受益者は購入者であり、受益者負担というこれまでの原則で考えれば、購入者が負担すべきコストということになる。 とはいいつつ、結局こうしたコストは一連のバリューチェーンの中の“弱者”が負担することになるのが世の常だ。 実際に、楽天が送料無料化を巡って出店者と争議になったことは記憶に新しい。 本来、物流コストの低減は、物流工程の技術革新などが実現しないと解決できず、しばらくは物流コストのババ抜きが続いていく可能性がある。 ただ、EC化の真の受益者は、ビッグデータを持つプラットフォーマーであるEC企業であり、これからは物流の技術革新に対する投資を行っていくべきだろう。 ― 引用終り ― B to Cの小売業が EC の進展とともに物流業に限りなく接近していることを楽天は感じている。 現状の物流システムのままでの「送料無料」化という無謀な取り組みが挫折したことは記憶に新しい。 アマゾンのように収益度外視で物流インフラに資源を集中することもできないでいる。 受注と配送のシステムを構築し、可能な限り自動化された効率のよい倉庫を持つという巨額の先行投資の覚悟ができなければ、アマゾンに勝つことはできない。 社内公用語を英語とした楽天は、ドメスチックな企業にとどまるか、グローバル企業となるかの分岐点にきている。 日本郵政グループ、西友との提携が「木に竹を接いだもの」とならないことを祈ろう。
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最終更新日
2021年06月19日 16時00分06秒
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