カテゴリ:経済
2030年の冬季オリンピックの開催候補地がゼロになったという。商業主義に塗れたオリンピックに世界から「ノー」が突き付けられたという意味でよいことである。 ワシントン・ポスト紙が「東京2020大会に関連した汚職事件が、もう一度日本で大会を開催しようという熱意を希薄にした」と報じるなど、五輪招致への関心が低下している現状は海外でも取り上げられている。 元東京オリンピック担当大臣の橋本聖子氏は2022年12月、東京オリンピック2020についての汚職疑惑の捜査に積極的に協力する意向を示す一方、札幌の招致活動は「非常に厳しいと思う」と述べている。現状では地元・札幌や北海道の住民の理解を得られないとする認識を示した。 IOCは、通例冬季五輪の開催都市が正式決定する7年前を控え、2022年12月に1都市に絞り込む目算だったらしい。ところが有力なホスト候補がない異例の事態となった。 IOCは金づるを探さなければならない。 ![]() …2030年冬季大会が「立候補都市ゼロ」になった当然の理由 IOCは札幌に押しつけるはずだったが… PRESIDENT Online 青葉 やまと フリーライター・翻訳者 バンクーバーもソルトレイクシティも招致を中止 冬季五輪の開催都市が決まらない――。こんな異常事態が発生している。 2030年冬季大会をめぐっては、もともと世界でも3都市しか立候補がなかった。そのひとつである日本の札幌は、昨年秋から冬ごろにかけて続々と発覚した東京2020大会の汚職スキャンダルが引き金となり、招致活動は一時停止となった。 IOCは日本人が汚職事件を忘れるのを待っている IOCは開催都市決定の延期理由を、気候変動による影響などによるものだと説明している。だが、札幌の世論が沈静化するまでの単なる時間稼ぎではないかとの指摘がある。 カナダ・パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授(政治学)はCBCに対し、気候変動はIOCにとって「二の次、三の次」であり、贈収賄スキャンダルを受けた「時間稼ぎの類い」だと述べている。ボイコフ教授は、(東京大会の汚職をめぐる)刑事裁判の進行とともに有罪が確定してゆく可能性があり、こうなればIOCはオリンピックの組織的な問題ではなく、個人的な問題にすり替えやすくなると指摘する。 ところが、まるでIOCの目算に反するかのように、時間が経つにつれ新たな不都合な事実が浮かび上がってきた。開催費用の問題である。 AP通信は昨年12月、冬季大会の開催費用が1年前の見積もりよりも20%ほど増加し、1兆7000億円にまで膨れ上がる見通しであると報道。汚職が招いた不信感に加え、コスト面での課題が明らかとなった。 ワシントン・ポスト紙によると、夏季大会の平均超過コストは当初予算の213%にのぼるという。IOCが収益確保のために精巧な施設やイベントを義務付け、開催都市に費用を押し付けているためだと指摘。こうした事情を踏まえ、「IOCとの取引を希望する国がますます少なくなっている」と報じている。 「ぼったくり男爵」の利権を改める好機が来ている 閉鎖的に選出されるIOC委員らも「五輪貴族」とも揶揄やゆされ、特権的な地位を盾に過剰な接待を受ける悪習が問題化している。 多数の開催候補都市がわれ先にと接待合戦を繰り広げることで生じていたが、少なくとも冬季大会に関しては開催地の選択肢が限定的であり、構図が変化するのも時間の問題だ。五輪貴族への歓声はいつしか波が引くように静まりかえることだろう。 開催都市が現在よりも強い立場を示すことが可能になれば、不平等な開催契約の見直しも夢ではない。パンデミックでも開催を取りやめることができないという、公衆衛生を犠牲にして五輪貴族に与くみする異常な契約は、改められるべき時が来ている。 CBCは昨年12月、温暖化で候補地の調整が難しくなっている冬季五輪について、IOCが従来よりも柔軟な運営を検討していると報じている。少数の都市での輪番開催などの可能性が議論された模様だ。IOCとしても、候補地が貴重になりつつあることを認識しているとみえる。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年03月04日 06時00分09秒
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