カテゴリ:この本読みました
母が遺していった本を引き続いて読んでいます。「男どき女どき」「女の人差し指」「阿修羅のごとく」に続き向田邦子さんの4冊目。
「男どき・・・」は短編+エッセイ集、「女の・・・」はエッセイ集、「阿修羅の・・・」は脚本でした。4冊読んで、この本が一番印象深い本です。エッセイ集なのですが、短編小説のような読後感があります。氏は決して波乱万丈の人生を歩んできたわけではありません。エッセイの中にも何か特別な体験が書かれているわけではありません。戦前を経験しておられるので、時代が私の時代よりは古くはありますが、私が見た景色とよく似た景色の部分も多く出てきます。 ああ、私にもこんな経験あったなぁとしみじみ思ったりもしました。父親、母親、祖母、兄弟、友達、先生、色んな人が登場しますが、私の回りにいた人々と重なる部分も多くあります。でも氏のペンで書かれると、こんなにも味わい深い一節になるんだなぁと感動してしまいました。 最後に、沢木耕太郎氏が解説を書いておられ、私と同じような印象を持っておられ、ここにも「ふんふん」と共感してしまいました。何か普通のエッセイと違う感覚があるのは、沢木氏も書いておられますが、やはりシナリオライターというバックグラウンドがあってのことだとは思います。 あとこの部分は沢木氏は書いておられませんが、幼少時代に父親の仕事の関係で、引越しを繰り返されということがあるのではないかと思います。私が小学生のとき、近くに農業試験場というのがあって、県外から引っ越してきて、また2、3年でどかかに引っ越していくという生徒がクラスに2、3人いました。彼ら、彼女らは、どことなくしっかりしていて、輝いていました。2,3年ごとに自分なりの基盤を作っていかないと世を渡っていけないからなのでしょう。同じ体験をしても、きっと印象が10倍にも100倍にも深いのではないかと思います。 実は、この本、読み始めて少しで、病院の行き帰りの電車の中に置き忘れて、大阪梅田の忘れ物センターに預けられました。遠方で時間もお金もかかるので、あきらめざるを得ないところですが、たまたま大阪に用事があり、取りにいくことができました。そうでなければ、この本のこの読後感を知ることはなかったです。幸運でした。 読書期間:2015年10月7日~2015年10月25日 発行所:文春文庫 発売:1981年12月25日第1刷 1982年2月15日第4刷 ページ数:281ページ(解説含む) 価格:320円(当時)(現在:530円+税) 初出:「銀座百点」に昭和51年2月号より昭和53年6月号まで掲載されたものを 昭和53年11月に文藝春秋社より単行本として刊行 よろしかったらぽちっとお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018/11/14 04:33:09 PM
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