カテゴリ:少子高齢化 退職金/年金
日本の土木建設業界は、大手、下請け企業、職人の重層構造で成り立ってきた。 工期の短い時などは、下請けがさらに重層化し、昼夜を分かたぬ突貫工事もしばしばのことだった。 そのような体質を改めぬままま、バブル崩壊後もを過ごしてきた土木建設業界は、職人が高齢化、安値受注により労働者が少ないにも関わらず日当を引き上げることができず、給料が安く、不安定な職種から順に職人が減っていった。 労働時間の上限規制の適用緩和措置が終わる2024年、業界の古い秩序は大きな変革を迫られる。 建設業界の新秩序 下請けとは 「殿様と家来」の関係だったが… 東洋経済オンライン 2024年3月25日 … (略) … 建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 … (略) … 3つの新秩序が生まれつつある 建設業界は「2024年問題」への対応に必死だ。「働き方改革関連法」に基づく規制が4月から適用され、時間外労働を月45時間・年360時間以内に収めなければならない。労使合意で36(サブロク)協定を結んでいても年720時間が上限とされる。違反した場合は刑事罰の対象になる。 長時間労働の慢性化や若者の流入不足など多くの構造問題を抱える建設業界は規制適用を変革の好機と捉える。「今年がラストチャンス。変革しなければ人が業界に入ってこない」(協同組合東京鉄筋工業協会の飛田良樹理事長)。 変革機運が高まっており、2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)。 サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」(山嵜俊博副社長)と、サブコンなどとの連携を密にする。「最近はスーパーゼネコンがサブコンを接待でもてなしている」(土木工事会社の幹部)といった声も聞こえる。 2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。 … (略) … デベロッパーとの力関係 新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている。鹿島の天野裕正社長は「われわれの工期の提案を理解していただけなければ、受注できなくてもやむなしとする事例も出てきている」と語る。 … (略) … 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」(準大手ゼネコン社員)。社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる。 ― 引用終わり ― ゼネコンが受注案件をすすめるには、適正価格で受注し、職人に適正な日当を払えるようにする必要がある。 重層的な産業構造に頼って赤字受注、安値受注を下請けに吸収させるようでは、仕事は進められない。 労働基準法に違反するような工事のやり方では、官公庁関係の工事の入札から外される。 デジタル技術導入による生産性向上が、ゼネコンなどの元請け企業に求められる。 残業規制、4月1日スタート 共同通信 2024年3月30日 働き方改革関連法に基づく時間外労働(残業)の上限規制が4月1日から建設業、自動車運転業、医師、鹿児島・沖縄両県での製糖業の4業種に導入される。長時間労働が常態化する業種で過労を防ぐ狙いだが、人手不足が深刻化し暮らしに影響を与える「2024年問題」として懸念も強まる。建設業では工事の遅れや中小事業者の倒産増が不安視され、景気の減速要因になりかねない。あらゆる産業が人手不足に直面し人材獲得競争は激化。賃上げをはじめとする処遇改善、デジタル技術導入による生産性向上が急務になっている。 一般業種への残業規制は19年4月から順次始まっていた。4業種は仕事の特性や取引慣行から長時間労働が常態化。早期の導入が難しいとして5年間猶予されていた。 建設業の上限規制は原則として年360時間、繁忙といった特別な事情で労使が合意する場合でも年720時間などとする内容だ。災害復旧工事には上限規制を適用しない仕組みがある。 政府のまとめによると、建設業の労働時間は全産業に比べ3.5%長い2022時間となっている。 ― 引用終わり ― 開催時期が決まっているEXPO2025 万博工事に「災害復旧工事」の場合の上限規制適用緩和と同等の取扱いを求めることは、論外だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年04月14日 06時00分12秒
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