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『帝都物語〈8〉未来宮篇』 荒俣 宏(著) 角川文庫 1987年11月10日 描かれた当時の近未来はとうに過ぎてしまった。 しかし富士山の火山活動の活発化が社会を不安にしている様子は、いまだ近未来。 帝都崩壊を企む加藤保憲。 崩壊を阻止するため、三島由紀夫の生まれ変わりの女が立ち上がる。 目 次 序 未来に訪れた夜 巻一 東京の開放 巻二 運命は動きだした 巻三 腐りゆく魔都 巻四 妖女たちの東京 巻五 転生の記憶 魔術解説 荒俣 宏 P218 その問題で、三島はいちど加藤保憲に問いただしたことがあった。なぜ東京崩壊を画策するのか、と。すると加藤はあからさまに、東京は末世の象徴として誕生したアジアの魔都であると答えた。バビロンやニネヴェ、ローマ、パリ、ベルリンがそうだったように、東京は末世のシンボルとして犠牲に捧げられるとしなのだ。 檄 楯の会隊長 三島由紀夫 …(略)… われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを拔かし、國の大本を忘れ、國民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陷り、自ら魂の空白狀態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、國家百年の大計は外國に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を瀆してゆくのを、歯噛みみをしながら見てゐなければならなかつた。われわれは今や自衞隊にのみ、眞の日本、眞の日本人、眞の武士の魂が残されてゐるのを夢みた。しかも法理論的には、自衞隊は違憲であることは明白であり、國の根本問題である防衞が、御都合主義の法的解釈によつてごまかされ、軍の名を用ひない軍として、日本人の魂の腐敗、道義の頽廃の根本原因をなして来てゐるのを見た。もつとも名誉を重んずべき軍が、もつとも悪質の欺瞞の下に放置されて来たのである。 …(略)… 物語と関係ないことではあるが、三島由紀夫でさえ、法理上「自衛隊は違憲であることは明白」としている。 隔世の感のあり、などと済ますことはできない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014年06月09日 07時17分25秒
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