テーマ:合併の「つけ」(14)
カテゴリ:経済
みずほ銀行の“システム障害事件”の背景、根っこには第一勧業銀行の組織体質があるようだ。 1971年、第一銀行(国内資金量順位6位)と日本勧業銀行(同8位、勧銀)が合併し、総資産では富士銀行を抜いて国内第一位の都市銀行として第一勧業銀行が設立された。 みずほ銀行の“システム障害事件”の背景にこの、合併で起きていたことが感じられる。 合併後も第一・勧銀相互の「たすきがけ人事」、頭取の「順送り」が行われた。行内の人事も人事部が二つ置かれ、旧第一と旧勧銀で別々に行われ続けた。 しかし、こういった人事は旧第一・旧勧銀出身者の対立を生んでしまって両者の融合が進まず、相乗効果をうまなかった。内部対立の悪影響で、富士・住友・三和・三菱などの他の上位都銀に比べると図体は大きくとも、収益性が低かった。 1999年8月、日本興業銀行・富士銀行・第一勧業銀行の3行が経営統合を発表。 2000年に3行が経営統合して持株会社・みずほホールディングスを設立。 2002年に3行のホールセール業務(大口・企業取引)を統合してみずほコーポレート銀行、リテール業務(小口取引)を統合して旧みずほ銀行を設立。 みずほコーポレート銀行と旧みずほ銀行が2013年に合併してできたのが、現在のみずほ銀行。 「みずほ」は相乗効果を狙った合併だったはずだが、リーダーなき相互牽制となった。 みずほ銀システムは信用ならない? …三菱UFJ・三井住友“ATM連合”から外されたワケ 2021年5月16日 Business Journal 三井住友銀行と三菱UFJ銀行がATMを共同運営 …なぜみずほだけ外されたのか? … (略) … 旧みずほ銀行が日本IBM製を採用すると、日本の汎用コンピュータ・メーカーで、唯一、富士通だけがメガバンクに採用されなくなってしまう。富士通の親密銀行・第一勧業銀行の猛プッシュもあって、富士通製の存続が決まった。 そして、富士通・第一勧業銀行チームは、勘定系以外のシステムに富士銀行のシステムを残すことで譲歩した。その繋ぎシステムにバグがあって、旧みずほ銀行の晴れやかな門出は、前代未聞のシステム障害となって永らく記憶にとどめられることになった。 日立オムロン製ATMの三菱UFJとNEC製ATMの三井住友が共同運用で日立オムロン製ATMに統一?…では、現在OKI製ATMのみずほどうするか 他のメガバンクは、合併前の強者と弱者が明確だったので、強者のシステムを残すことですんなり方針が決まった。ところが、みずほのみ、合併前の3行がほぼ対等だったから、方針を決められない状況に陥り、それが勘定系システムの統合作業を困難にさせてしまったのだ。 では、ATMの場合はどうか。 日本のATMは、OKI、日立オムロンターミナルソリューションズ、富士通フロンテックの3社でシェア90%を占めており、OKI、日立オムロンターミナルソリューションズがそれぞれ40%のシェアを保持しているという。 OKI(旧・沖電気工業)は富士銀行(旧・安田銀行)と同じ安田財閥の系譜を引く企業である。同社のホームページによれば、2015年にみずほ銀行に納入している全ATM(約6000台)の画面を刷新し、HTML方式に移行したという。2021年にみずほ銀行のATM障害が発生した際、みずほ銀行のATMは5891台だったから、みずほ銀行のATMはほぼ全てOKI製である可能性が高い。 一方、日立オムロンターミナルソリューションズは日立製作所とオムロン(旧・立石電機)のATM事業を分離・統合した企業で、同社ホームページで三井住友銀行への生体認証型ATMの導入事例を掲げている。また、日立製作所のホームページにおいてグループ会社のニュースリリースとして、日立オムロンターミナルソリューションズの三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)への税公金など各種払込票対応可能なATM納入事例を掲げている。 ― 引用終り ―
ただでさえ複雑なコンピュータ・システムは複雑さに輪がかかり、システム・トラブルのもとが増えたことが、度重なるシステム障害を招いたようだ。 みずほ銀行の歯車を狂わせた 統合前の首脳9人総退陣劇 2013年10月26日掲載 週刊ダイヤモンド みずほでかつて、首脳9人総退陣という“政変”があった。みずほホールディングス(HD)にぶら下がっていた日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行の旧3行が統合する直前の2001年11月末のことだ。 この人事こそが、みずほという巨大銀行の歯車を狂わせ、今日に至る混乱の歴史の幕を開けたといっても過言ではない。さらにいえば、今、国民的な関心事となっているみずほ銀行による暴力団への融資問題の遠因になったともいえる。今、その内幕を初めて明かす──。 当時、みずほは不良債権処理の上積みと株価下落のダブルパンチで危機にひんしていた。そこで、経営刷新による再起を狙ったみずほHDの西村正雄氏(興銀頭取、当時。以下同)、山本惠朗氏(富士頭取)、杉田力之氏(一勧頭取)の3CEOは、自らを含む取締役9人の一斉退陣を発表した。 ところが、その9人には、池田輝三郎副社長(旧興銀)、小倉利之副社長(旧富士)、そして杉田CEOと共に3行統合をまとめあげた西之原敏州副社長(旧一勧)ら、次のトップと目されていた本命候補全員が含まれていたため、みずほは一転、大混乱に陥る。 一斉退陣劇を幹部として目撃したみずほOBは、本命候補が巻き添えになった背景をこう振り返る。 「統合準備の過程で、西村頭取や山本頭取は、一勧の西之原さんの実力をまざまざと見せつけられた。彼を残すと、その後のみずほは一勧に牛耳られる、そう恐れた」 そこで自らの退任に合わせ、各行の本命とされた後継候補を含む全取締役の退任という詰め腹を切らせる形で、西之原氏の後継の芽を摘んだというわけだ。その際、3CEOが敬遠していたり、その能力に嫉妬していた副社長も退任させられたといわれる。 旧行の思惑と私情が絡んだトップ人事によって、みずほはその出だしからつまずき、大きくゆがんでしまう。その象徴が後継指名だ。 本命候補が軒並み姿を消したことで、白羽の矢が立った人物こそ、長年にわたってみずほに君臨することになる前田晃伸HD社長と、齋藤宏・みずほコーポレート銀行(CB)頭取だったのである。当時、この2人の名前を後継候補として挙げていたメディアは皆無といってよく、無名の存在だった。 「リーダーシップも経営手腕も身についていない人間がトップに立ったことが、みずほの悲劇の始まりだった」(元取締役) そんな前田・齋藤の2トップ体制が暴走し始めたのは04年。2人と同時に3トップの一角に座った工藤正・みずほ銀行(BK)頭取の突然の退任劇からだ。 工藤頭取は後任として一勧出身の森信博CB副頭取を推したが、前田・齋藤連合がこれに真っ向から反発。同じく一勧出身ながら前田氏に近かった杉山清次氏をBK頭取に引き上げたのである。 「一勧出身者の誰一人として頭取に推薦していない」と、一勧出身のみずほOBがこき下ろす杉山氏の擁立に成功したことで、2人による長期政権の地盤が固まる。「2人の子飼いだった杉山のせいで、旧一勧の有望人材は一掃されてしまった」とこのOBは悔やむ。 2人の暴走はこれ以降、さらに加速していく。 グループ内で6000億円を超す巨額損失が発生しても、齋藤氏の“路チュー”事件という前代未聞のスキャンダルが発覚しても、トップに居座り続けた。権力は堕落する、まさにその典型といえた。 前田・齋藤連合に放逐され姿を消す 次期頭取の本命 2人が権力にしがみついた結果、人材の劣化をも加速させてしまう。将来を嘱望され、トップにも直言できる実力者たちが、時に2人から放逐され、時に2人に嫌気が差し、次々とみずほから去ったのだ。 05年には、旧一勧の総会屋事件で真相究明に立ち上がった「四人組」の1人で、歯に衣着せぬ物言いながら信望の厚かった後藤高志氏が西武鉄道へと転じた。07年には旧富士のエースとして次期頭取の呼び声が高かった町田充氏が関連のリース会社に出された。 将来、みずほを背負う逸材と評されたある取締役は、「あの社長とこれ以上同じ空気を吸いたくない」との捨てぜりふを残し、自ら関連会社に退いた。 「自らの立場を危うくする優秀な人材が台頭してくると、ことごとく排除してきた」とみずほ関係者は振り返る。まるで頭取候補として名前が挙がった幹部は、みずほを去らなければならないルールでもあるかのようだ。 09年に前田、齋藤、杉山の3氏は会長に退いたが、後任には自らのお気に入りを据えて院政を敷き、事実上の6トップ体制と世間の批判を浴びた。金融庁からの圧力もあって、11年にようやく2人はみずほを離れたが、遅きに失した。 旧3行はいずれもかつては国内屈指の名門銀行。そうした銀行の統合で生まれたみずほは、国内の上場企業の7割と取引関係がある圧倒的な顧客基盤を誇った。 にもかかわらず、人材放逐と内向きの利権争いによって、業績は凋落。いつしか「メガバンク最下位」が定位置となっていた。さらに2トップが権力保持にきゅうきゅうとする中、行内のガバナンスはなきに等しく、不祥事は他メガバンクに比べて格段に多かった。一度の人事の過ちがかくもみずほをむしばんでしまったのだ。 しかし、みずほはトップ人事だけでなく、もう一つ、3行統合前に最大の過ちを犯しています。 旧3行の日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が1対1対1の対等合併を行ってしまったことです。各行が平等であったが故に、他のメガバンクのように明確な勝者が決まらず、みずほはその後、旧3行による果てしなき主導権争いの渦にのまれていくことになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月29日 16時00分06秒
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