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2015年02月04日
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オサマ・ビンラディン アフガンの荒野から孤独の荒野へ


ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳
               .

 [ビンラディンは]やがて口を開くと、彼の(そしてアメリカとサウジとパキスタンの)助けを借りて、アフガン人がロシア人を打ち破った戦いを振り返っていった。話はしたかったのに、「テロリズム」について問い詰められるのを嫌っていたらしい。アフガニスタンのことを聞かれているとわかると、悦んで話してくれた。あの国での経験がどれほど自分の人生を変えたことか。
               .

 「あの国で暮らした二年間は・・・どの国で生きる百年間にも代えがたいものでした。侵略が始まると、怒りを抑えきれなくなって、すぐにアフガニスタンへ向かいました。結局、九年のあいだ遠征を繰り返したことになります。アフガンの人びとが残虐な仕打ちを受けている。震えるほどの怒りを感じました。強大な力を持つ者たちは、あらゆる理由をつけて、その力を振りかざす。人びとを虐げ、自分たちの思いのままにしようとする。その事実を初めて思い知らされました」
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 ビンラディンは、新しい幹線道路の建設を監督しているイラク人技師、モハメッド・サアドといっしょに、アフガニスタンのパクティア州にあるザザイの山々を穿ち、巨大なトンネルを完成させた。そこに野戦病院と武器倉庫を設けるためだった。そして、国土を横断し首都カブールまであと二五キロに迫ろうとするムジャヒディーン土道を築いた。土木技術を凝らした偉業である。ロシア軍はついにこの無舗装の道を破壊できなかった。
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 では、ビンラディンはあの戦いからどんな教訓を得ただろうか。五〇〇人のアラブ戦士を戦闘で失っていた(戦士の墓はパキスタンの国境を越えた街、トルハムに並んでいる)。自らも五度の負傷を受けた。ビンラディンも不死身ではないはずだ。
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「死を恐れたことは一度もありません」と答えた。「ムスリム[イスラム教徒]として、死ねば天国に召されると信じていますから」。せわしなく歯を磨いていたオサマだったが、もうミシュワクの小枝を置いて静かにゆっくりと話していた。肘を膝の上に乗せ身を乗り出している。話が途切れることはなかった。
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 「出撃の前には、いつも神がスクーン、平安な心を与えてくださいました。私を捕らえようとしたロシア軍が三〇メートル前まで迫ってきたことがあります。それでも心は安らかで、爆撃を受けながら思わずうたた寝をしたほどです。私たちはソ連を打ち破りました。ロシア人は逃げていった・・・。アフガニスタンでの戦いは私の人生でもっとも尊い経験でした」
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では、彼がアフガニスタンへ導いたアラブ人のムジャヒディーンはどうなるのか。戦士たちを支援し武器を与えたのはアメリカだった。しかし、ロシアとの戦いが終わると見捨てられてしまった。ビンラディンは、この質問に対する答えを用意していた。
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 「アメリカから援助されていたというが、そんな証拠は私も私の兄弟たちも見ていない」という。「戦士たちが勝利をおさめ、ロシア軍を撤退させてから、仲たがいが始まった。私はサウジアラビアへ帰り、タイフやアブハで、また道路建設に従事するようになりました。アフガニスタンでトンネルや道路を作るのに使った機材もすべて引き上げた。言われるように、戦争のあとでここに来た同志もいます」。何人の同志が来たのかと聞くと、ビンラディンは首を振った。「その質問には答えたくありません。みんな私といっしょにここで働いています。ポートスーダンまで道路を引く仕事です」
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 アルジェリアの戦争についてはどう考えているのか尋ねようとした。すると、グリーンの背広を着たモハメッド・モウサという男が私の肩を叩いた。ナイジェリア人だと自称していたが、スーダン政府の安全保障捜査官だった。「質問はそれくらいで十分だろう」といって、背広の男はインタビューを打ち切った。
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 最後に写真を撮らせてほしいと頼んだ。ビンラディンは躊躇していた。写真はほとんど撮らせたことがない。彼の中で、分別心が虚栄心と戦っている。ようやく立ち上がると、開通させたばかりの道まで歩き、金糸に縁取られたローブを翻してカメラに向かった。そして寂しげな微笑を浮かべて見せた。二度シャッターを切る。オサマは、大統領が報道陣にするようなしぐさで左手を挙げて時間がきたことを告げると、そのまま新しい幹線道路の視察に出かけていった。
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 私がビンラディンに会った二カ月後のこと、彼を暗殺しようとした男たちがハルツームの住居を襲撃した。スーダン政府はCIAに雇われた者たちの仕業だと推定した。その年の終わりに、サウジアラビア政府がビンラディンの市民権を剥奪した。一九九六年の初めには、スーダンを出国して、どこでも好きな国へ行くがいいという許可が出される。オサマが身を寄せることができる場所はひとつしか残されていなかった。自らの信仰を見つめ直させてくれた、あの国だった。
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岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
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Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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写真はアフガニスタンの岩山でソ連陸軍をまちかまえるムジャヒディーン。







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最終更新日  2015年02月22日 20時57分32秒
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