テーマ:自動車・交通(1694)
カテゴリ:自動車メカ、部品
現代の自動車は、外観だけでなく骨格の革新、洗練が求められている。 燃費、動力性能の要請から軽量化は引き続き要求される。 操縦安定性、騒音など乗り心地の観点から強度の強化が要求される。 安全性の観点から、衝撃吸収性、使用される場所別の適正な強度が要求される。 強度の異なる鋼材を繋ぎ合わせる技術の一つがプレス加工。 相反する要求を実現するため、プラットフォームの高規格化だけでなく、ボディ骨格の成型技術の進化が適用され、モデルチェンジの内容は外観からだけでは推し量りがたいものとなった。 自動車のボディ成型で「ホットスタンプ」とは、ホットスタンプ専用の材料を約900℃まで加熱し、プレス加工するのと同時に、金型で保持/急冷し、材料に焼き入れをする事により、高強度な製品を作る技術。 材料を加熱する事により材料が軟化するため、今までの一般(冷間)プレスよりも、製品精度も出しやすい、という利点もある。
ホットスタンプはセンターピラーなどに用いられている。 日産が崩すボディー骨格の常識、 新型ノートに「冷間」高張力鋼板 高田 隆 日経クロステック/日経Automotive 2021.01.07 日経XTECH 小型車のボディー骨格において、ホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)の牙城が崩れた。 現在、トヨタ自動車やホンダなどは、引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプを使用する。 これに対して日産自動車は、新型「ノートe-POWER」のボディー骨格に、1.5GPa級の高張力鋼板(冷間プレス材)を適用した。 小型車のボディー骨格に適用する高張力鋼板の冷間プレス材では、これまで1.3GPa級が最高強度だった。 日産が1.5GPa級の冷間プレス材を使うのは、今回の新型車が初めてである。 冷間プレス材の1.5GPa級という強度は、ホットスタンプに並んだ。 ただ、冷間プレス材は、強度が高くなると成形性が悪くなる。 また、プレス成形後の反りが大きくなり、高い寸法精度を出すのが難しいという課題もある。 日産はこれらの壁を、素材と成形法の改良で乗り越えた。 先進運転支援システム(ADAS)の標準搭載などが進み、小型車の質量は増える方向にある。 車両質量の増加は燃費規制への対応を難しくすることに加えて、「低燃費」という小型車の商品力を低下させる。 また、小型車は衝突事故時の乗員の被害が、中大型車よりも大きくなりやすい。 小型車には、中大型車と同水準の衝突安全性が求められる。 軽量化と衝突安全性を両立するためトヨタ自動車やホンダなどは、引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)をボディー骨格に多用する。 例えばトヨタの小型車「ヤリス」や小型SUV(多目的スポーツ車)「ヤリスクロス」は、センターピラーやフロントピラー上部に1.5GPa級のホットスタンプを使う。 ボディー骨格に使用する1.5GPa級のホットスタンプの比率(質量比、以下同じ)は5.2%である。 …(略)… ホットスタンプの使用では、ホンダが先行する。 2013年に発売した小型車の先代「フィット」(3代目)のセンターピラーに、1.5GPa級のホットスタンプを適用していた。 20年2月に発売した現行フィット(4代目)では、センターピラーとサイドシルに1.5GPa級のホットスタンプを使った。 ボディー骨格に使うホットスタンプの比率は、ヤリスクロスと同水準の5%となっている。 ― 引用終り ― 自動車が電動化すると「他産業からの参入障壁が下がる」などというのはエコノミストの謬見に過ぎないことがよく分かる。 自動車は模倣が困難なエンジンやサスペンションだけでできているのではない。 現代の自動車は、ボディの成型、内装など夫々に高度な技術が適用されており、高品質で廉価な製品を作ることは、自動車メーカーでさえ容易なことではないからだ。 電動車専業メーカー・テスラの車が10年後どんな状態か、非常に興味深い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年07月04日 21時03分40秒
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