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2012.08.31
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カテゴリ:拉致
めぐみさんは「知りすぎた」…北「死亡」シナリオの原点

2012/08/31 10:05更新・産経新聞・IZA

 【再び、拉致を追う】第1部 めぐみさんは生きている(1)

 日朝首脳会談から10年。日本人拉致事件を最初に報じた産経新聞は、被害者らの早期帰国を促すために、事件や政府対応、北朝鮮側のもくろみを改めて検証していく。

                   ◇

 「まことに申し上げにくいことですが…」。10年前の9月17日、東京・麻布台の外務省飯倉公館の一室で、横田めぐみさんの父、滋さん(79)と母、早紀江さん(76)らを迎えた植竹繁雄外務副大臣(当時)はそう切り出した。

北朝鮮・平壌では、小泉純一郎首相(同)と会談した金正日総書記が日本人拉致を認め、謝罪。その後、飯倉公館で待機していた家族らに被害者の「安否」の説明があったのだ。

 「娘さんは亡くなっています」。断定的な物言いに、滋さんらは「いつごろ」「原因は」と矢継ぎ早に尋ねた。返ってきたのは「詳細は分からない」という一言だった。

 その後、日本政府は調査団を派遣したり、複数回にわたって実務者協議を続けた結果、北朝鮮側の説明は「1994年4月、精神状態を治療するため、平壌市49号予防院に入院した後、院内を散歩中に近くの松の木で首をつって自殺した」という内容に集約された。

 北朝鮮側は、証拠として病院の「死亡台帳」なるものを出してきた。表紙には「患者入退院台帳」とあり、「入退院」の文字の部分に何本もの線をひき、その上に「死亡」と書き換えたものだった。

 当時は、捏造(ねつぞう)された台帳という認識だった。

 日本政府も「信憑(しんぴょう)性が低い」と北朝鮮側に照会しているが、2001年時点のめぐみさんの生存情報が明らかになったことで、台帳が「入退院」だったことも、逆にうなずける。

 めぐみさんは94年の時点では、帰国した拉致被害者の一部と同じ集落の招待所で生活していた。

 被害者らはめぐみさんが病院に連れて行かれたのを確認しているというが、「死亡した」という点については、「その後、噂で聞いた」としているだけだ。

 北朝鮮側が描いためぐみさん「死亡」のシナリオの原点がおぼろげながらに見えてきた。

 なぜ、めぐみさんは「死亡」とされたのか…。

 ■めぐみさんは「知りすぎた」

 一昨年7月、長野県軽井沢町の別荘。初めて日本を訪れた大韓航空機爆破事件(1987年)の実行犯、金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員(50)が拉致被害者、田口八重子さん=拉致当時(22)=の家族と面会していた。

 金賢姫元工作員は、「蜂谷真由美」名義の旅券を所持し、日本人女性になりすまし犯行におよんだ。日本人化教育に従事させられたのが田口さんだった。田口さんとの思い出を家族らに話すため、金賢姫元工作員は来日したのだ。

 その日の夕刻、横田めぐみさん=同(13)=の父、滋さん(79)と母、早紀江さん(76)も面会に訪れた。めぐみさんも北朝鮮で金賢姫元工作員の同僚の女工作員に日本語を教えさせられていた。

 早紀江さんは金賢姫元工作員から言われた言葉を明かした。

 「八重子さんとめぐみさんはきっと生きています。でも2人が出てくるのは一番あとになるでしょう」

                 ■ ■ ■

 「工作員を現地人化させるために、現地から教官を連れてこい」。金正日総書記は76年、工作機関に拉致指令を出した。めぐみさんや田口さんはじめ、その後1~2年のうちに多くの日本人が北朝鮮に拉致された。現地人化教育を受けた第1期生8人のうちの1人が金賢姫元工作員だった。

 田口さんとの生活は81年7月から83年3月までの20カ月間におよんだ。日本語だけでなく、食事の作法や顔の洗い方、日本人女性のしぐさを完璧に習得した。

 ちょうど同じころ、めぐみさんも、同期の金淑姫(キム・スッキ)工作員と同居生活を送るなどしながら日本語を教えていた。金淑姫工作員はめぐみさんと離れた後、金賢姫元工作員を誘い、一度だけめぐみさんに会いに行っている。めぐみさんと金賢姫元工作員にも接点があった。

 金賢姫元工作員は、大韓機爆破事件の際、金正日総書記の直筆による命令書を受けていた。ソウル五輪(88年)開催を妨害するために実行され、乗客乗員115人の命を奪ったテロを、北朝鮮はいまだに認めていない。「金賢姫」は存在しない人物、「南朝鮮(韓国)がでっち上げた偽物」となっている。

                 ■ ■ ■

 金賢姫元工作員は来日時、拉致被害者と家族の支援組織「救う会」の関係者にこうも語った。「めぐみさんと八重子さんは大韓機事件という秘密に関係することがありますが、しかし他の秘密もあるのではないかと思います」

 めぐみさんについては金正日総書記一家に日常的に接していたという情報がある。総書記の元側近幹部が韓国当局者に明らかにした情報で、「横田めぐみは95年前後の1~2年、金正日の子供の一人の家庭教師をしていた」というものだ。

 2007年に脱北した元朝鮮人民軍所属の男が、拉致を実行した朝鮮労働党の工作機関、作戦部の幹部を父にもつ友人に聞いた話を救う会は重視している。

 「めぐみは見てはならないものを見ている。知っていることが多い。帰したら(工作機関の拠点である)連絡所の秘密を知られてしまう」

 めぐみさんのものとされる「遺骨」が日本の鑑定で偽物と判明したころの04年末~05年初めごろの話だという。

 めぐみさんや田口さんが「知りすぎた被害者」だったことが浮かび上がる。

 「生存情報はある。日を追って複数、情報が重なっている。情報の確度はさまざまだが、最近は被害者がいる場所の情報も入ってくる」。政府関係者はそう話し、こう続けた。「生存情報は交渉の切り札。情報を持っていることが重要だ」





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最終更新日  2012.09.02 12:01:03



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