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2015年02月23日
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たったひとりの聖戦(1)
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たったひとりの聖戦(14)

オサマ・ビンラディン アフガンの荒野から孤独の荒野へ


ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳


── ビンラディンは神に祈った。「アメリカ合衆国が自らの影の上に倒れ伏す日まで、私たちが戦い続けられますように」
               .

 ・・・彼はそっけなく別れを告げた。軽く握手をして、小さく会釈して、姿を消していった。私はマットレスに横たわり、コートを体にかけて暖を取ろうとした。銃を持った男たちはそこでそのまま眠った。ライフルやロケット弾発射砲を担いだ男たちはキャンプを囲む低い尾根を巡回していた。
               .
 
 あれから何年ものあいだ、男たちのことが頭から離れなかった。エジプト人のモハメッド・アタは、あのテントで会った若者たちの中にいただろうか。わずか四年後に、だれもが名前を知るようになる一九人の男たちを、私はひとりでも見ていただろうか。被り物をしていたからか、男たちの顔がどうしても思い出せなかった。それに、多くはスカーフで顔を覆っていた。
               .
 
 寒さと疲れから、寝つくことができなかった。「自らの影の上に」という言葉がくり返し浮かんできた。ビンラディンとあの冷酷でひたむきな男たちは、私たちに何をもたらそうとしているのか。
    
           .

▽ たったひとりの聖戦(最終章)
               .
 それから数時間のことは、映画の静止画像のように、ひとつ一つ私の記憶に焼きついている。
               .
 
 寒さに目が覚めると、髪の毛が凍っていた。山道をトヨタの軽トラックで滑るように下った。護衛についたアルジェリア人の戦士が言った。「もしここがアルジェリアだったら、喉をかき切ってやるところだが、いまはビンラディンの命令がある。命を賭けておまえを守ろう」
               .
 
 ジャララバードへつづく壊れかけた幹線道路に出た。夜明けの礼拝を行うために、四輪駆動を止めた。荷台に乗っていた三人の男と運転手は、カブール河の広い入り江の側にマットを敷いた。男たちが跪いたとき、山々の上に太陽が立ち上がった。遥か北東にヒンドゥークシュ山脈の頂が淡く青い空に白く輝いている。山脈は国境を分かち、遠く中国に背を寄せながら、ここアフガンの地を、さらなる苦難を待ち受ける荒涼の地を、その懐に抱いていた。
               .
 
 この記憶の中に、ひときわ鮮明に浮かんでくるものがある。ビンラディンのキャンプを出た直後の光景だった。北方の山に強い光を見たとき、まだ夜は明けていなかった。車のヘッドライトかと思った。それとも、キャンプの警護に立つ戦士が合図を送っているのか。だが、光はそのまま何分たっても消えなかった。やがて、その光は山より高く空に燃えているのが見えてきた。微かに輝く尾を引いている。
               .
 
 トラックに乗った男たちも光を見上げていた。「ハレー彗星だ」とひとりが言った。彼は知らない。あれは新しい彗星だ。つい二年前に、アメリカのアラン・ヘールとトム・ボップによって発見されたばかりだった。アフガニスタンの山中に住むアラブ人の男たちが、ヘール・ボップとハレーを混同するのも無理はない。いまや彗星は金色の尾を伸ばし、さらに光を強めていた。時速七万キロで宇宙を走り抜ける壮大な力の輝きだった。
               .
 
 私たちはトヨタを止めて外に出ると、闇を切り裂いて進む炎の球を見上げた。アルカイダ戦士とイギリス人が肩を並べて、四千年に一度だけ現れる驚くべき宇宙のエネルギーに、心をふるわせていた。
               .

 「ロバートさん、こんなふうに彗星が見えたとき、人がなんというか知っていますか?」。アルジェリア人だった。私のすぐ横で同じように空を見上げている。「この彗星は大きな戦争の前触れです」
               .
 
そうして私たちは、星座を渡り天空を照らす炎を追いつづけた。
               .


               .
岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
               .

Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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               .
写真はカシオペア座とヘール・ボップ彗星。







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最終更新日  2015年02月25日 06時24分35秒
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