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カテゴリ:時事問題
(社説余滴)ないなら、つくればいい 郷富佐子 2019年6月16日 朝日新聞 ジェンダー問題で社説を書こうとして、完全に行き詰まってしまった。 私が論説委員になった2年前から、女性を取り巻く悲惨な出来事が続いている。医学部入試で受験生が減点された。相撲では病人を助けようとしたのに「土俵から降りて」と言われた。セクハラ告発者らへの激しいバッシングも。一方で、国も地方も女性議員の数はあまり増えていない。 どうすれば、性差別やジェンダー格差をなくせるのか。この大きな問いへの答えがほしくて、日本や来日中の財界人、政治家、学者、支援団体代表などを訪ねて回った。日本の社会保障や課税制度などの問題点。社会で無意識の偏見をなくす仕組み。選挙法を改正した欧州の例――。 示唆に富む話に深くうなずきつつ、聞けば聞くほど、逆に自分の言葉は沈んでいった。壮大な解決策をまとめ、どう論じればいいのかわからない。半ばやけっぱちで「法律も制度も意識も全部変えないとだめだ」という社説案も考えたが、大声で叫んでいるだけで論になっていない。 悩んでいる最中に、都内の私立大学で「ジェンダー問題とメディア」について話をする機会があった。 朝日新聞を含む多くのメディアでは、ジェンダー格差につながるような言い回しを避けるためのガイドラインをつくっている。たとえば「女医さん」や「ママさん議員」のような、性別で役割や職業を固定する言葉は使わない。でも言い換えマニュアルではなく、意識を高めるのが狙いだ。 そんな説明の後、学生たちに「『奥さん』とか『ご主人』といった呼び方をどう思う?」と聞いてみた。「ロマンチックな響きで良い」と「主従関係みたいで嫌」に意見が分かれた。「妻や夫が自然。でも『お宅の夫さん』とは言わないから、ご主人と呼ぶしかない」の声に、「それなら自分たちで決めればいい」ということになった。 一番多かったのは予想通りで、「パートナー」。意外だったのは「あいかた」で、「相方」ではなく「愛方」と書くそうだ。愛があるからだという。好みはあるだろうが……。 ないなら、つくればいい。なによりその感性に、光が見えたような気がした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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