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私が昨日の日記で、アマゾンから到着した書籍のリストを掲載したら、ミドル英二さんが「こう言うのが興味深いのだ」とおっしゃる。
私としては不思議だったが、どうもプロのライターとしては、人の読書傾向、最新の購入書籍が参考になるらしい。 では、ここ2・3年のアマゾンでの散財の中身を公開しようか? それに加えて、古くからの「積ん読本の山」も思い切って公開しようか? などとも思ったが、それは明日にして、今日はとにかく、俳句の英訳について書くこととする。 昨日の日記では、msk222宗匠のご教示をいただいて、俳句と川柳のちがいについて考察してみた。 その日記に対するコメントの中で、こういうものがあった。 ★ olive2004さん >明日は上野市で芭蕉生誕360年 世界俳諧フュージョンてのがあります、アメリカとかイギリスの俳句協会から来た人が連句を行うそうですが、英語の俳句ってのがあるくらいですからね。 ★ 私は英語による俳句の価値を認めない立場の人間だ。 英語だけにかぎらず日本語以外のどの言語によっても、俳句の翻訳には大きな限界があるのではないだろうか? そういう立場に立って、下記のようなレスを返した。 ---------------- 以下は私の独断と偏見ですが、ご容赦下さい。 『古池や 蛙とびこむ 水の音』 これを様々人が様々に英訳していますが、私から言わせれば、全くダメです。 とても俳句になんかなっていません。 そもそも俳句とは、日本語でなければ成り立たない文芸です。 日本語は膠着語という語族に入っています。 朝鮮語・トルコ語・フィンランド語・エストニア語・マジャール語(ハンガリー語)などが、この語族だと思いますが。 しかも、単語がカバーする意味があいまいで、同音以後が多い。 こういう言語でないと俳句は不可能だと思います。 ただし、日本の俳句の英訳は意味がありませんが、はじめから英語で作る俳句はそれなりのスタイルを成立させることが出来るかも知れません。 あくまで可能性の問題ですが。 できれば、msk222さんのご意見もいただきたいと思います。 ★ これに対して、msk222さんから返事が来た。 ---------------- 僕は、言語学については弱いので正確には答えられないと思います。 感覚的にいうと、俳句の味わいは日本という風土と言葉があってこそのものだと思います。 英語俳句が作られていますが、日本から外にでた場合は、俳句もどきになると僕は思います。 たとえば熱帯地方で、冬の季語の俳句をつくっても実感がない。アメリカで豆腐に甘みをつけてソフトクリームのように食べている影像を見たことがありますが、あれは材料は豆腐でも豆腐料理とはいいがたい。 俳句の優れた味わいどころは、言葉を放ったあとの空間です。英語で同じ空気を生みだれるのかどうか、僕には疑問です。 川柳の場合は、基本的には意味の伝達ですから英語でも作りやすいような気がします。 ★ また、私からの返事。 ---------------- ご返事深謝。 そうですよね。 私も上で英語のHAIKUは『全然ダメ』と頭から否定しています。 英語だと、明晰すぎるので、意味の輪郭がクッキリとしすぎて、余韻が残らない、意味の幅出しが全然出来ない、ファジーな味を出せない。 それに何よりも、言葉のつながり方が違いますよね。 ★ 『古池や・・・』の句も、初めは、『蛙飛びこむ 水の音』の 7+5 だけが出来て、その上の 5 がなかなか浮かばないで、芭蕉は苦吟していたという。 弟子の基角が『山吹や』としてはどうかと、アドバイスした。 なぜならば、古今和歌集の世界では、『鳴く蛙』と『山吹』はお決まりの組み合わせだったという。 (例) かはづ鳴く 井手の山吹散りにけり 花のさかりに あはましものを 橘 清友 これに則って発句してみると、山吹や 蛙鳴く 古池で ・:・・なんて、妙な句になってしまう。 もちろん芭蕉は、基角ご推薦の『山吹や』案を、『あのな~、それは、めちゃ月並みやないか! お前は何考えてんねん!』・・・と、(芭蕉は三重県の伊賀の出身)却下! 無事、『古池や』が、『上の5』に、おさまったのだ。 ★ ここで、この句を英米人が英訳したものを吟味してみよう。 ちょっと注意しておくべきことは、英語で『HAIKU』をつくるに際しては、下の三つの規則があるというのだ。 ○ 短く3行にまとめること、 ○ 動詞はひとつにかぎること、 ○ 現在形であること、 そして季語はなくてもよいらしい。 ● An old pond! A frog jumps in- The sound of water. 古池 蛙が跳び込んで 水音が 注) old pond は、臭い匂いのするどろどろの池、という汚いイメージがあるそうです。 ● The old pond: A frog jumps in -- The sound of the water. 古池 蛙が跳び込んで 水音が 注) 池が The old pond と、定冠詞になっています。 この池・・・という意味が入っている。 ● An ancient pond! A frog leaps in; The sound of the water. 古池 蛙がそこに跳び込んで 水音が 注) 池は An ancient pond となっている ancient って、old より堅い感じなんじゃないだろうか? よくわかんないけれど。 ● Into the calm old lake A frog with flying leap goes plop! The peaceful hush to break. 静寂なる古い池に向かって 蛙が跳び込んでそのポチャンという音が 平和な静寂を破った ● 小泉八雲・ラフカディオ・ハーン Lafcadio Hearn の英訳 Old pond -- frogs jump in -- sound of water. 古池 蛙が跳び込んだ 水音 ここでなんと!小泉八雲 ラフカディオ・ハーン Lafcadio Hearn の登場である。 かの高名な世界的作家だから、間違いあるまい。 『日米の架け橋だ~!』 どっかで聞いたセリフだと思わない? アテネでの体操男子団体最終科目米田選手鉄棒着地直前放送的伝達者描写的口舌・・・なのである。 が・・・、実はヘルン先生、この俳句にみならず、日本人の奥深い、幽玄な、しブイ感覚が、わかっていなかったという意外な証拠がある。 それは・・・、蛙を複数形にいているのだ! 小泉さん!(純ちゃんじゃない) こんなところで、蛙を複数にしたらアカン! 蛙が「ぼちゃん! ぼちゃん! ぼちゃん! ぼちゃん!」と、次から次とカエルが跳び込んだら、さっぱり高雅な俳句になりませんがな~。 (なんで、大阪弁になるんや?) ★ いずれにしても、俳句を英語に翻訳したものがいかに味気ないものかわかると思う。 こんなもので『HAIKU』なんて感激している英米人の気持ちがわからない。 よく日本人が『外国人に日本のことはわからない』とうかつなことを言うことに批判があつまっているが、俳句だけは『外国人にわからないリスト』のトップを走る資格があるのではないだろうか? ● ここで芭蕉を茶化した『川柳』を紹介。 『芭蕉翁 ぼちゃんというと たちどまり』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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