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映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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November 26, 2014
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みなさん、こんばんは。

昨日も今日も雨で寒いこと。夜までずっと雨が続いて寒かったですね。
さて、この季節とびきり寒い北欧発のミステリを紹介します。

北京から来た男(上下) [ ヘニング・マンケル
The Man From Beijing/Kinesin

2006年1月、ひとけのない村をうろついていた狼が人間の死体を食べるという恐ろしい場面からこの物語は始まる。その人間を殺したのはもちろん狼ではなく、死んだ人間も一人ではない。過疎で老年人口が高いその村では、じつに19人が殺されていた。そして1人の少年を除いた全ての人がめった斬りにされていた。生存者はいたが何も見ておらず聞いていない。殺された人達はなぜ、誰に殺されたのか?そして少年だけは、なぜ情けをかけた殺され方をしていたのか?

 捜査する側の人間としてまず登場してくるのが現役の女性刑事とその仲間達だが、その役割は女性裁判官ビルギッタに取って替わる。母親が事件のあった村の出身であったことからこの事件に惹きつけられた彼女は、関心を持って近づいてくるジャーナリストと共に事件の真相を探る。

 この2006年のプロットと並行するように、ある中国人から始まる一族の歴史が描かれる。そして読者は一足先に、この一族の一人がビルギッタが手に入れた日記に登場するある人物と同一人物だと気づく。それによって上巻を読み終わる頃には、読者は事件の動機については、ある程度察することができる。さてあとは登場人物や捜査陣が、いつどうやって真相に辿りつくかを待つだけかと思いきや、上巻ラストになってあっと驚く人物が逮捕される。

 引きとしてはいい終わり方をした上巻だが、下巻は主に中国という国が主役となる。上巻で登場した一族の姉弟の対立を通じて、共産主義を貫く立場とより資本主義に傾く二つの中国があぶり出される。かつて日清戦争の頃に欧米列強に搾取されていた側だった国が、今は発展途上国と経済大国の二つの貌を巧みに使い分けて、搾取する側に変貌する。ここで描かれている中国は、今私たちが見ている中国とほぼ同じであり、書かれている内容にいちいち頷く所もある。おそらくここに書かれていることのうち、いくつかは将来本当に起こるかもしれない。

 ヴァランダーシリーズでも、マンケルは単純に事件や犯人だけを追わず、その背景にある国を主役としてきた。しかし今回は著者が共産主義に共鳴していたこともあって、後半にその思い入れが多分に書かれてしまい、ミステリの部分が疎かになってしまった印象を持った。なぜ百年以上も経ってあの計画が実行に移されたのか?なぜあの男はあんな末路を迎えたのか?事件は結局どういう収まりを見せたのか?等々である。過疎村斬殺事件の真相を決定的に知る場面がないまま終わる(読者は知っているが)エンディングは、物足りなかった。また、女性裁判官と女性刑事の間も分かりあうということをしないまま終わってしまった事も残念だった。


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最終更新日  November 26, 2014 10:20:32 PM
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