映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、おはようございます。昨日は頭痛が酷くて早く寝てしまいました。
蒸し暑かったですね。

さて、こちらはドラキュラ伝説に纏わるミステリです。


ヒストリアン1 / エリザベス・コストヴァ
Historian

左上はめくれ、ところどころに皺がよっている。また、端の方には読まない時には閉じる事が出来るひもがついていて、真ん中より上あたりに血痕らしき滴が落とされている。まさにそのような装丁の本が物語の中に登場する。つまり、我々は物語の登場人物達が出会った謎めいた本を手にしている、というわけだ。なかなか遊び心のある装丁である。

　外交官の一人娘で16歳の少女が、父ポールの書斎で一冊の古い本を見つけた。龍の挿絵がある以外は何も書かれていない本には「親愛なる　そして不運なるわが後継者へ」という、宛名のない手紙の束がはさまっていた。娘に本の事を聞かれたポールはヨーロッパ旅行に娘を伴い、学生時代の事を話す。父の恩師であるロッシ教授は、自分と同じ龍の本を見つけたポールに龍に関わる資料を託したのち、突然失踪していた。彼が最後に口にしたのは、「ドラキュラは生きているんだ。」と言うにわかには信じがたい言葉だった。本当にドラキュラが生きているならば、墓には何もないはずだ。では、その墓はどこに？

　物語は

1.ヒトラーが勢力拡大を図る1930年代のヨーロッパでロッシ教授が謎の本を探す過程
2.ポールが娘に伝える1950年代のヨーロッパでロッシ教授を探す過程
3.1970年代　現在のヨーロッパで娘が連れと共に謎の資料を探す過程

の三層構造になっているが、ボリューム的に1は割合少なく、2と3が並行して進む。
　章に分かれてはいるが、語り手を特定するタイトルがついておらず、また章の中でも語り手が入れ替わるため、戸惑うかもしれない。だが、しばらく読めば語り手が誰かはわかる書き方がしてあるので、さほど混乱はしない。探し手達が謎を探る手立てとするのは文献で、彼等の主な行動範囲が図書館や古い遺跡とくれば、読書好き・旅行好きにもってこいの素材だ。「ストーリー自体は冗長」とコメントしていた読者も、その描写力には舌を巻き、登場人物達が駆け廻るヨーロッパの都市が目に見えるようだと絶賛。

　上巻は、謎ときものにはお約束の怪しい影や、「えっもしかしてこの人が吸血鬼に！」と疑うような現象をまぶして蘊蓄好き・歴史好きを中心に読者を牽引していく。個人的には「娘に自分の若き日の姿や恋を手紙で伝える父親」という設定に萌え。うま～くぼかしてある架空の場所のモデルを探すのも一興。



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