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みなさん、こんばんは。7月ですね。福原愛ちゃんおめでたですね。かわいいお母さんになりそう。
ところで夏目漱石の『三四郎』を読んだことはありますか? 今日紹介する作家はその中に登場します。 アフラ・ベーン 「閨秀作家」の肖像 Aphra Behn 福岡利裕 彩流社 夏目漱石の「三四郎」で、タイトルロールの三四郎が学校の図書室に行くと、本の中の文章に線が引いてある。三四郎が、ある本を開くと「またここにも線が!」とうんざりする。その‘ある本’こそが『オルノーコ』である。アフラ・ベーン自身と著作について「英国の閨秀作家だ。十七世紀の」と説明する件もあるが、正直話の筋にはあまり関わりのない所なので、印象に残っていない読者もいるだろう。 そもそも『オルノーコ』とはアフリカの王国の王子の名前だ。彼が絶世の美女イモインダと恋仲になるが、老王がイモインダに目をつけていたため彼女は売り飛ばされてしまう。オルノーコも騙されてイギリスの奴隷船の船長に捕まってしまう。南アメリカのスリナムのプランテーションでイモインダと再会。ここまでならハッピーエンドだが、イモインダが妊娠。自分の子供が奴隷になることを憂えたオルノーコは皆に反乱を呼び掛ける。反乱は失敗し、オルノーコは厳しい拷問を与えるバイアムを殺して自分も死のうとする。しかし自分の死後イモインダが辱めを受けることを憂えて彼女を殺してしまう。イモインダは愛する夫に喜んで殺されていくが、残されたオルノーコは、逃げればいいのに茫然としていたため簡単に捕まえられ、手足を切断されて死んでしまう。 「ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』よりも遥か昔に尊厳を持つ奴隷を描いた」とあるが、作品自体は奴隷制を否定していない。そして、ざっと書いた粗筋からも、オルノーコが少なくとも現代の感覚からすれば、少しもヒーロー的ではないのがおわかり頂けるだろうか。かなり場当たり的に反乱を決め、仲間達が「自分達だけなら逃げるが、妻も子供もいて逃げられない」と訴えたのに対して、かなり自分勝手な論理を振り回している。よくこれで人がついてきたものだ。そして妊娠している妻を「殺そう」と判断し、妻が嬉々として死んでいく…という件も現代感覚では受け入れ辛いだろう。 アフラ・ベーンも謎が多く、「ベーン」は結婚相手の姓だ。かなり年の離れた夫だったらしく、繰り返し「望まぬ結婚をするよりも、愛に生きた方がいい」というテーマの作品を書いている。「オランダでスパイをしていた」という噂もあるが、彼女は繋ぎに過ぎない。何かと問題があった男性と恋愛関係にあったアフラに白羽の矢が立ち、何度か手紙を国王に送っているが、よその土地に入るにもかかわらず資金援助がなく、最後は借金をしてイギリスに帰って来る。それでも我慢できたのは彼女がガチガチの王党派だったからだ。 面白く紹介しようという意図よりも、同じような表現が何度も登場し、研究発表の趣が強い。 なお、『オルノーコ』は2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」に選出されている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
July 1, 2017 12:00:12 AM
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