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カテゴリ:山田風太郎
みなさん、こんばんは。
先ごろ亡くなられた樹木希林さんが出演した映画『日々是好日』が公開されています。 そういえばNHKでドキュメンタリーも放送されていました。1年に4本も撮影したんですね。 今日も山田風太郎の作品を紹介します。 剣鬼喇嘛仏―山田風太郎忍法帖短篇全集〈12〉 山田風太郎 ちくま文庫 二〇〇四年四月から筑摩書店で刊行が始まった『山田風太郎忍法帖短篇全集』も、二〇〇五年三月に刊行された本書でちょうど、一年をぐるりとまわって十二冊目、そして最終巻となる。 十二冊を通読したところで、考える。さて、忍者とは何なのか? 「敏捷に、飛んだり跳ねたりする」「黒装束を身に纏い、闇にその身を溶かして行動する」「敵方の秘密を探ったり、要人暗殺を行う」いずれもあたっているが、 総括して言えば、「常人には出来ぬ事をする」という事になるか。 ところがそんな特異な存在である忍者でも、近代に勝つ事はできなかった。「やあやあ我こそは」と一人の武士の能力に戦の行方が占われる中世を、鉄砲・大砲を用いる集団戦の時代・近代が、凄まじい勢いで押し流した。忍法の世界にも、同じ事が起きたのだ。たとえ相手が誰であっても同じ結果が出るため、使う人よりも道具がものをいう科学やテクノロジーが、使う人の能力が大事な要素となる忍法を圧倒する。『銀河忍法帖』では、山風のトリックスター・大久保長安が放った戦車に、忍者達はいともたやすく踏みつぶされる。 そして本書の掉尾を飾る『開化の忍者』に登場する忍者達もまた、踏みつぶされはしなかったが、文明開化の世を謳歌する事などできなかった。本作は、氏が明治もの『警視庁草紙』を連載中に発表された、本当に最後の忍法帖となる。泰平の世の中で、本当の働き場所である戦場を体験する事のなかった忍者達は、怪異な特殊訓練を施され、「いったい、これが忍びの者として、何の役にたつのか?」と首をひねる。これは、室町時代を舞台に氏が著した『忍法創世記』で、戸惑いながら「忍法おぼろ月」「忍法弓張月」などを習得していった忍者達の感想と奇しくも一致している。セックス絡みの忍法が登場する所も同じである。草創期でも終末期でも、忍者、いや、人自体、変わらぬ所はあるらしい。 でも、山風だけは、カワリモノだ。こんな作家、今までも現れなかったし、これからも現れない。奇想天外な忍法を次から次へと繰り出す割には、女性のパターンは「凄艶」「清麗」ばっかり。「うわー、食事どきにやめてください〜。」と叫びたくなるようなねたを披露して、すっかり我々の頭の筋肉まで弛緩させるかと思えば、きっちり史実に合わせて、かつ非常にうまくフィクションと組み合わされた作品で、ペダンチズムを刺激する。 江戸川乱歩への愛に溢れた『伊賀の散歩者』(本書収録)なんぞは、後者の良い例である。 カワリモノ達が示すカワラヌモノで泣かされ、カワリモノで笑わされる。そんな忍法帖との日々をくれたとびきりのカワリモノに、心からの礼を言いたい。 God Hug You! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
September 9, 2023 08:24:46 AM
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