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October 22, 2023
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みなさんこんばんは。ジョン・F・ケネディ大統領の衝撃的な暗殺事件を描いた映画『JFK』(1991)を監督した巨匠オリヴァー・ストーンが、事件から60年経った今、新たな証拠と調査に基づき、独自の視点から暗殺事件の陰謀に迫るドキュメンタリーの邦題が『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』に決定し、11月17日より全国公開されることが決定しました。今日もノンフィクション作品を紹介します。

魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男
The Mastermind:Drugs.Empire.Murder.Betrayal.
エヴァン・ラトリフ/著 竹田円/訳
早川書房

​ インターネットは様々な可能性と危険性を広げた。アラブの春はインターネットなしには成立しなかったろうし、子供達が親の知らない所で危険に遭遇することも増えた。つまり、功罪相半ばする存在というわけだ。本編は罪に焦点を当てた実録ルポである。三部構成で、それぞれのタイトルが第一部【オープニング】第二部【ポーンとキング】第三部【エンドゲーム】とチェスに例えられている。但し、内容自体は読了してみてもチェスの勝負には似ていない。

 2012年2月13日、フィリピンで不動産業者が、ベッドカバーで簀巻き状態の死体で発見される。両目の下を拳銃で撃たれていたことから、何らかの署名殺人との疑いが持ち上がる。

 2012年3月アメリカの麻薬取締局DEAの捜査官が、ウィスコンシン州の薬局に立ち入り検査に入る。薬局店のオーナーは、70万錠以上の違法な処方鎮痛薬を出荷していた。オーナーは香港の謎の銀行口座から、電信送金で2700万ドル以上を受け取っていた。

 立ち入り捜査から一か月後、香港で犯罪組織を調査している調査員が、一軒の倉庫を捜査すると、小分けにされた硝酸アンモニウムが多量に発見される。この物質は爆薬の材料として用いられる。

 トンガで釣りをしていた漁師が、難破したヨットで遺体とコカインを発見する。

 世界で期間をおいて別々に発生していた事件の全てに、一人の男性が関係していた。南アフリカにルーツを持つポール・ル・ルーである。彼がタイトルロールの魔王である。その名前から威圧的なイメージを想起する。ところが、写真も掲載されているので見てみると、確かにふくよかだが雲を突く大男という感じではない。むしろ、遠隔操作で、かつ自身の思い込みだけで暗殺計画を命じる点が怖い。それを魔王と捉えるかどうかは個人次第だ。天才プログラマーだったのだから、その才能を表に出せる事業に使えばいいものを、彼はもっぱら裏稼業に注力した。彼の富を生んだのは、オンライン薬局事業だった。自分の子供達だけで王国をつくると何人かに公言していたらしい。これは大変気持ち悪い。また、保護を受けるためだけに現地女性を妊娠させていたなど、女性に対する尊敬の念は全く感じられない。まあ、悪の限りを尽くしたと言える。

 すっきりしないのは、これだけ悪事を重ねたル・ルーが、途中から協力者として部下を逮捕する方に回るからである。筆者も彼を最初に見つけた捜査官も、なかなかル・ルーに会えないし、ルポライターの立場にある筆者がル・ルーを追い詰められるはずもない。その辺りがすっきりカタルシスを感じられない所以である。

 コロナ禍を経るとあまり違和感がないが、日本ではほぼ体面で診療や薬の購入が行われているため、アメリカで簡単に薬が手に入ることにかなり違和感と驚きがある。また、そのような簡単なシステムだからこそ、犯罪集団がつけいる隙がいくつもあった。今後日本でも類似犯が出てこないといいが。

 MCUのルッソ兄弟がドラマ化。


魔王 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男 / 原タイトル:THE MASTERMIND[本/雑誌] / エヴァン・ラトリフ/著 竹田円/訳​​ネオウィング 楽天市場店

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最終更新日  October 22, 2023 12:00:22 AM
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