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カテゴリ:海外の作家が書いた歴史小説
みなさんこんばんは。今年のノーベル平和賞は収監中のイラン女性人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏に与えられましたね。今日は有名なギリシャ文学にちなんだ小説を紹介します。
女たちの沈黙 The Silence of the Girls パット・バーカー 早川書房 ミュネースの妻ブリセイスは、トロイア戦争でアキレウスがリュルネーソスを陥落させた際に夫を殺され、捕虜となり、戦地におけるアキレウスの妻となった。アガメムノーンはクリュセスの娘クリュセイスの返還を拒んだため、クリュセスはアポローンにギリシア軍に災いが降りかかるように願った。これを聞いたアポローンはギリシア軍の陣営に必殺の矢を雨のように放ち、多くのギリシア兵が倒れた。このためアキレウスはクリュセイスの返還を提案したが、アガメムノーンは返還に応じるかわりにアキレウスの捕虜ブリセイスをもらうと言い張った。女神アテーナーになだめられたアキレウスはアガメムノーンにブリセイスを引き渡したが、腹を立てて戦場に出て戦うことをやめてしまった。その後の戦闘でギリシア軍が不利になると、アガメムノーンはブリセイスをアキレウスに返還して和解しようとしたが、アキレウスはこの申し出を断った。このためギリシア軍は苦戦が続いたが、パトロクロスが戦死したときアキレウスはついにアガメムノーンと和解してブリセイスを受け取り、戦場に復帰した。 決して軽んじる意味で言うのではないが、“たかが”女の事で喧嘩し、また女の事で仲直りか。しかし、そもそもトロイア戦争がヘレネという女性の獲りあいから始まっている。但し、戦いが長引くにつれて、目的は女性ではなくギリシアとトロイア、英雄たちの意地の張り合い、国の威信を賭けた戦いへと変容していった。 ル・グウィンが『ラウィーニア』で『アエネーイス』にて一言も話さぬヒロインラウィーニアに語らせた如く、著者は『イーリアス』で語らなかった「戦利品」= a prize of battleブリセイスに言葉を与える。本人の意思は当然のように無視され、モノ扱いされながら、彼女が何も考えなかったはずがない。ましてや彼女だけでなく、敗者トロイアの女性達が共に戦利品として暮らしていたのだ。男たちには何も話せずとも、同じ境遇の女性達が何も語らなかったのはおかしい。むしろ共通体験をした彼女達だからこそ話せたことがあったはずだ。一方で、戦利品として伴われた男性との間に子供が生まれた女性もいれば、クリュセイスのように親元に返される女性もいるなど、女性達もそれぞれ立場が違ってくると、今度は話せない事が増えてくる。 本作では、ブリセイスに執着した理由として、彼女がアキレウスの母親に似ていた事が挙げられる。これはオリジナルの設定で、母親は海の女神テティスだ。不死身の体にするために河につけたが、その際かかとを持っていたために、かかとを射られると死ぬ。有名な神話上の設定であるこのかかとは、今回アキレウスの致命傷にはならない。アキレウスの運命を決するのはある人物だ。プリセイスの一件も遠因と言えるが、女神テティスがアキレウスにこのまま突き進めばどうなるかを明かしたにも関わらず突き進んだのは、別の人物が原因である。よく男は理性的、女は感情的と言うが、本編に登場するアキレウスとブリセイスの悲しみに対する態度は真逆だ。ブリセイスは、家族を殺したアキレウスに感じる所はあるものの、決して共倒れしない。運命に流されるように見えて、踏みとどまる杭は逃さない。かたやアキレウスは哀しみと怒りで、味方ですらどうかと思う行動を誇示する。それでも、世に英雄として、ブンガクとして書き残されるのは後者なのだ。ならばブンガクとは常に、不完全である。 女たちの沈黙 [ パット・バーカー ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 16, 2023 12:00:22 AM
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