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みなさんこんばんは。外国人の技能実習生の失踪が相次ぐ中、出入国在留管理庁などは、失踪者が多いカンボジアの3つの送り出し機関からの新たな実習生の受け入れを11月末から停止することを決めました。今日もアンリ・トロワイヤの評伝を紹介します。
イヴァン雷帝 Ivan le terrible アンリ・トロワイヤ 中央公論新社 イヴァン雷帝といえば、中野京子さんの『怖い絵』でも取り上げられた『イワン雷帝とその息子』が有名だ。息子イワンが死去する少し前、妊娠していて体調を崩していた皇太子妃が、正装して出席しなければならない行事に略装で参加したところ、雷帝が激怒して皇太子妃を杖で殴り、その結果、流産。息子イワンが雷帝に意見しに行ったところ、激高した雷帝が今度は息子を杖で殴り殺す。怒りに任せた行為とはいえ、後継者を自分の手で殺してしまった。呆然として血を止めようとしても、もう止まらない。罪の大きさ、後継者なき国の未来は後から蘇ってくる一方で、哀しみで眼は虚ろ。なんと恐ろしい。 彼は幼くして、父・モスクワ大公ヴァシーリー三世をまず病気で失う。母親エレーナは、大貴族達からすれば、外国からきたよそ者でしかないため、幼い息子二人を託していくのは心もとない。死を前にして余裕があった父は、何度も貴族たちに幼き息子の後見を頼んでいく。しかしあっという間にその遺言は覆され、母親エレーナは主馬頭と愛人関係になり、夫の兄弟を排除するなどやりたい放題。彼女もあっという間に急死。毒殺の噂もある。 両親を亡くしたイヴァンは、建前だけ敬われつつも、大貴族達が自分達をないがしろにするばかりか、権力闘争の末には命さえ奪いかねないことを知っていた。自分に救いを求める貴族達が、目の前で敵対勢力にずるずると引きずられていくのを見ても何もできず、ただただ自分にとばっちりが来ないように、震えることしかできない。子供なんだから仕方がない。貴族達にしてやりたいリベンジは犬や虫に向かい、結局彼は嗜虐的な性格になる。ああこんな性格が為政者になったら恐ろしい。 それでも救われる道は開けていた。何とか生き延び、1547年全ロシアの皇帝(ツァーリ)を名乗って妻アナスタシアと結婚する。妻とはラブラブだったが、何と彼女も毒殺される。誰も信じられなくなった雷帝は忠臣を次々と虐殺し、ヘンリー八世のように八人の妻をこれまた次々と娶る。こんなに排除しても次がいるのが人材豊富の証拠か。いや逆に浪費か。エリザベス一世にプロポーズするが、速攻断られる。当たり前である。海の向こうで若い女王に笑われているのがわからない。気まぐれで貴族を処刑するため、朝元気であっても夜も生き残れるとは限らない。貴族達は、毎日がサバイバルゲームのような宮廷生活を送る。一方、民はといえば、恐怖政治の国のツァーリを、クーデターを起こすでもなく、ただただ有難がる。ロシア国民の耐性が凄い。凄いが絶対にマネしたくない。 そして最後に息子殺しである。父殺しもギリシア悲劇の御代から大罪であるが、自分や国の未来を託す資質を持つ息子を殺すとは何事か。彼が死んだ時、託せる息子は父親が“寺男しかできないんじゃないか”と言っていたフョードルしかいない。かくてオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』の幕があがる。 【中古】 イヴァン雷帝 改版 / アンリ トロワイヤ, Henri Troyat, 工藤 庸子 / 中央公論新社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】もったいない本舗 楽天市場店 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 30, 2023 12:00:26 AM
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