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みなさんこんばんは。漫画家の鳥山明さんが亡くなりました。まだ若いのに。今日は日本の銀山にかかわる時代小説を紹介します。


出羽院内 銀山仕置帳
高橋義夫
祥伝社

「金が出たぞ！」その一言が、瞬く間に広がって、一獲千金を目論む輩が
カリフォルニアに押し寄せる。さらに家族が、そして娼婦達、彼女
達を守る用心棒、そして彼等に物を売りつける商人達が、時間差で
やってくる。さらに、来る者拒まずだったため、脛に傷持つ者達も多数いる模様。
かくて、色と欲の渦巻いた町では、犯罪・暴力がはびこる。
後からやって来た権威は、取り締まりに大わらわ。

西部劇で、何度も見たシチュエーション。
「金」が「銀」に代わった他は、全く同様の事態が、
ここ、奥州随一の産銀量を誇る出羽国・院内銀山で繰り広げられ、
決して広くはない土地に、220軒が建ち、3000人が住んでいた。
大阪の陣など立続けに大きな戦があったばかり。土地も家族も、悪い時には
身体の一部まで失った、敗戦側の多くの武士達が、行き場を求めて彷徨っていた。
山伏、商人、遊女、遊芸人ら、通りすがりの者達も、あわよくば、銀を、
財産を手に入れようとする。
そんな無法の町を取り締まるのは、銀山奉行・梅津主馬助。
部下が3人の仕置番、その下に足軽30人。
こりゃ、カリフォルニアより、大変かも。
仕置番の一人・助十と、その部下八郎兵衛は、関ヶ原で負けた側にいたため、
辛酸をなめている。たまたま取り締まる側にいるが、
運が悪ければ、取り締まられる側だったかもしれない事は、誰よりも
自分達がわかっている。
だから助十は、権威側である事を笠に着て威張らない。
傾城の駆け落ちに、「惜しかった！」と悔しがったり、季節の変わり目に
たる〜くなったり、「まだまだ未熟じゃのう」と思える所もあるが、
とっても頼れる人物だ。恩義があるから主馬助に服従するが、
庶民の苦しい立場を見過ごさない。知人の名誉を守ろうとし、
自分が不利になっても、敢えて沈黙を選ぶ。
そんな助十の良い所を、周りにいる人達も、ちゃんとわかっている。
「だから私は言ったでしょう。」と言う事もあるけれど、年若の助十を立てる
足軽・八郎兵衛。危険な潜入捜査も辞さない若い足軽・甚五郎。
高橋氏作品「意休ころし」の上司とは百八十度逆の、
四面楚歌となった助十を信じ抜く、頼れる上司・梅津主馬助。
関ヶ原の敗軍の将の領地であるため、幕府からもその忠誠を疑われ、隠密をさしむけられる。
いわば内憂外患の中で、過去には敵対していた銀山奉行とその部下達が、
団結して事にあたる。
剣戟場面よりも、その結びつきが素晴らしい。
「傾城駆け落ち」「白盗」「味噌屋小町「無座嵐太夫」「悪屋形」「山おじ」「天狗の
歯ぎしり」「十分ノ一の仇討」収録。

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