映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。クルーズ船の乗客がやっと降りられたのにまた隔離なんですね。
長い…オリンピック開けるのでしょうか。
さて、今日はまるでゴッドファーザーと称された小説を紹介します。

翡翠城市(ひすいじょうし)
Jade city
フォンダ・リー
(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045)

　支配国ショターからの独立を目論み、若き革命家コールとアイトが協力して戦った。しかし独立後二人の男は袂を分かち、ジャンルーンを仕切るコール家を中心とした〈無峰会〉とアイト家を中心にした〈山岳会〉に分かれる。

　時代は、コール家でセンが存命であったものの、彼の孫である若き〈柱〉長男のラン、ランを支える〈角〉の次男ヒロを中心に強く結束していた。一方アイト家では血の繋がらない養女マダがあっという間に血の粛清を行った。とある店で下っ端のチンピラが翡翠を手に入れようとしたことから、両家の均衡が破れていく。

　“ゴッドファーザー＆魔術”という惹句の通り、近代都市にニーノ・ロータのメロディが流れてきそうだ。例えば『ゴッドファーザー』では、アル・パチーノ演じる海兵隊帰りの三男・マイケルがは家族は非合法ビジネスで稼いでいるにも関わらず堅気でやっていく決意をしているが、父の狙撃によって組織のビジネスに足を踏み入れる。彼に準えられるのがコール家の妹シェイだ。彼女は翡翠も一族も嫌いエスペニアに留学しており、マイケルと同じく恋人もいたが、恋にも破れマイケルと同様家庭の事情で組織に深く関わっていく。『ゴッドファーザーPartII』では身内の裏切りが描かれたが、本作でも組織の中に裏切り者がいることが発覚する。

　コール三兄妹に加える不確定要素が、彼等から従兄と呼ばれるアンデンだ。初登場時は学校に通っていて最も若く、卒業後は翡翠を手に入れて一族に入ることが確実視されていた。しかし母親が狂気の果てに死んだと言われ、自らも制御できない力を持つに至り、一族とは袂を分かつ道を選ぶ。

　主要人物四人に加え、誰もが特別な力を持っているにも関わらず、他人の持つ力が羨ましくて仕方がない。他方、他人が羨む自分の力は不要なものだと思っている。それぞれの感情のねじれが、時に反発を生み、逆に協力体制を敷く。お互いが嫉妬と羨望と尊敬の入り混じった思いで見つめているのは密かな萌え要素と言える。

　翡翠を操れる特権階級と、彼等に貢ぐことで庇護を得る階層に分かれており、僧侶達もいるが、宗教が一大勢力というわけではない。翡翠を操ることで目からビームを出して建物を破壊するような怪獣のような圧倒的な能力はなく限定的であり、対決はガチ勝負。日本のヤXXっぽい。

　一点気になる点があった。主要な役職には名前がついており、『柱』を支える参謀は『日和見』と呼ばれる。しかし日本語では、この言葉は良い意味では使われない。対立する両者の勝ち馬に乗ろうとするずるい人間、或いは裏切る人間として受け取られる。もともとそのイメージで使っているのなら良いが、そうでないならイメージと役割がそぐわない。

2018年世界幻想文学大賞受賞作。

​
翡翠城市【電子書籍】[ フォンダ リー ]​​楽天Kobo電子書籍ストア​