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みなさん、こんばんは。「パラサイト　半地下の家族」などで知られるパク・ソダムが、甲状腺乳頭がんを公表しましたね。
さて今日は京極夏彦さんの人気シリーズ最新作を紹介します。

遠巷説百物語
京極夏彦
KADOKAWA

　物語にはいくつものフェーズがある。まず“譚”。いわゆる昔話に登場する妖怪話。その妖怪が何だったか？という科学的な追及はしない。
　その次に登場するのが”（咄）”。盛岡藩筆頭家老南部義普の密命を受けた宇夫方祥五郎は、わざわざ話を金で買う。売り手は豪農の息子乙蔵で、何をやっても失敗続きだ。巷で噂となっている話を聞くのだが、どこか古の妖怪を思わせる。
　三つ目のフェーズは”噺”。噂話の渦中にいる人達の視点で何事かが進行中であり、やがて一つの事件が起こる。
　最後に登場するのが”話”。妖怪がらみの事件は一応の解決を見るが、祥五郎はその裏に何かあると睨む。その過程で出会うのは仲蔵という男で、出来事の真相がここで語られる。仲蔵はいろいろと仕掛けを施す日本全国の仲間たちとも知り合い、と書けば、もちろん浮かぶのは百物語シリーズのあの男。一方で遠野領に漂う不穏な気配が、話が進む毎にじわじわと強まり、最終話『出世螺』にて目的が明かされる。

　”話”フェーズは、毎回祥五郎が真相を義普に語ってよいのか悩む場面で終わる。なぜならば、妖怪めいた話で決着をつけることによって、一応八方丸く収まっているからだ。舞台裏を明かすことで問題が大事になり、罪に問われる者もいる。妖怪は恐ろしい存在ではなく、人々の行き所のない悩みや不安、怒りを“なかったこと”にするアイテムになっている。
神も仏もいないことを承知の上で信じる、承知の上で縋る、そういうことが出来なくなった
という記述もあり、江戸時代ながら「昔は何でも化け物の所為にできた」時代から人々の意識が変化していることを示唆する。それでもうまく騙りに騙されその魅力に目覚めた人が、不思議の郷にまたひとり。


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