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みなさんこんばんは。ことし秋のアメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びの初戦、中西部アイオワ州の党員集会で、トランプ前大統領がほかの候補者に大差をつけて勝利しました。今日も世界探検全集から紹介します。

カムチャツカからアメリカへの旅 (世界探検全集)​
Reise von Kamtschatka nach America mit dem Commandeur-Capitan Bering
ゲオルク・ヴィルヘルム・シュテラー
河出書房新社

　ロシアのピョートル１世は、科学者ライプニッツから「アジア大陸とアメリカ大陸がつながっているのかどうかの疑問を解決できるのは皇帝をおいていない」と言われ、シベリア奥地探検を命じた。繋がっていればそりゃあもう、大喜びで侵略しただろうが、生憎つながっていなかった。
　
　カムチャツカ半島といえば、太平洋戦争末期を知る方には感慨深い土地であろう。その土地を探検に行ったドイツの外科医による探検記である。彼が同行したのはデンマーク生まれのロシア帝国の探検家ヴィトゥス・ヨナセン・ベーリングの、第2次カムチャツカ探検である。第1次カムチャツカ探検では、アメリカ大陸を確認することができなかったので、再度ベーリングが指揮する探検隊が派遣された。外科医ながら植物への造詣が深く、ロシアの植物分類に大いに貢献した。

　栴檀は双葉より芳しというが、彼はまさにそんなタイプだ。そして指摘も的確である。だが致命的な欠点があった。独断専行と怒りを抑えられない点である。そんなの集団行動に向かないだろうと思ったあなた、正しい。結局彼は、それが原因で命を落とすのだ。どれだけ優れた視点を持っていても、主張が正しくても、伝わらなければ、実行されなければ意味がない。

　彼は独断でカムチャダール族を釈放したため、カムチャダール族の反乱に与したとみなされてしまった。それからの経緯がロシア的といえば仕方ないのだが、一方でシュテラー自身の訴状が認められたのに、無罪の報告書が遅れて届いたため、彼はイルクーツクに戻るよう言われてしまう。話が違うと訴えてもやむなし。そこでシュテラー、警官を殴ったり脱走を図ったりと、もう自分を追い込むことしかやっていない。大事な事だから何度も言う。自分が正しいと思うのは結構だが、認めさせないと意味がない。北極の極寒でも生き抜いたのに、捕えられ拷問を受け37歳で亡くなる。本文中は
「はげしい、短い一生であった」
としめくくられているが、いやいやそんな締めくくられ方はよくないだろ。

　ちなみに隊長のベーリングも病死している。最も良い探検は、やはり生還ありきなのだ。

クラシェニンニコフ「カムチャツカの住民」を併録。　


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