サイゴン関係復刻日記 その2 テーマ : サイゴンへ出発/到着 ~~~~~~~~~~~~~~ 私が商社に入社して二年目、戦時下の南ベトナムのサイゴンへの赴任が決まった 当時、サイゴンは「砲弾が「雨アラレと降る!」と日本の新聞では報道されていた しかし、私は駐在が決まってうれしかった 海外ならどこでもいいから、行きたかった その当時はまだ成田空港が建設されて無い時代である 羽田空港からエールフランスのプロペラ機でサイゴンへ出発した 座席に着くやいなや、鼻にかかったフランス人スチュワーデスのアナウンスが頭上のスピーカーから流れてきた 国内線にはそれまでも数度、搭乗したことがあったが国際線は初めてである その国内線でさえもその時代のスチュワーデスは花形で、お嬢様学校や有名女子大卒の美人ぞろいだった ところが、このエールフランスの国際線のスチュワーデスはもっと上なのである 日本人スチュワーデスも、とてもバタくさい 激務に追われてガールフレンドもいなかった私には刺激が強すぎる「美人環境」である ―――― ◇ ―――― 話題が飛ぶが、 よく「飛行機に乗ると不安で眠れない」と言う人がいる 私には、その心理がわからない 立派な科学者までが「あんなに重たい金属製のものが空中に浮かぶ・飛ぶと言うことが考えられない」・・・とまで暴言を吐く この人達の思考能力というものは救い難いではないか? 「揚力」があるでしょうが、揚力が!! 学校で習った揚力というものがっ!」 私はいつも、この種の人たちをこのように、内心、密かに罵倒しているのである 申し訳ない ―――― ◇ ―――― 前夜の徹夜の業務引き継ぎがこたえて、離陸するなりすぐに深い睡魔におそわれた 気がついた時にはもうマニラ空港である 着陸するとすぐに熱帯特有のスコールが襲来した 大粒の雨が窓を打って南国の太陽に焼けた滑走路の色がみるみる雨にぬれて黒く変わって行く 日本では見たことのない風景である 機はマニラ空港をすぐに離陸、次にはタイのバンコック空港に着いた バンコック空港では給油があって、私たちは空港のトランジットラウンジに入った 機外に出て驚いた 息が詰まるほどの湿気と温度なのだ すぐに体中の毛穴から汗が噴き出てきた 当時のバンコック空港には空調もなかった 空港全体、今まで知らなかった熱帯特有の重い湿った臭いがした かび臭くもあった 空港の売店で名物のタイ・シルクのネクタイを買って機内にもどった いよいよサイゴン上空にさしかかった サイゴンの上空は一面に鉛色の雲におおわれて街はときおり雲の切れ目からチラと見えるだけである そのうちに機は雲の下にまで降下した スコールに濡れて鮮やかな、赤い屋根や緑の街路樹が窓一杯に広がって、どんどん近づいてきた 機はそのままユラユラ揺れながら降下を続けて、ついにサイゴン空港の滑走路にタッチダウンした 出迎えには日本系の代理店のベトナム女性が来てくれていた テキパキとして怜悧そうである スコールはすでにやんでいたが、空港から宿舎への途上、すべてのものが濡れていた 道路も泥だらけでぬかるんでいる 両側の建物の壁も雨に濡れて湿って変色していた その建物や道路脇に人間が並んで猿のように群れている その人間達が半裸でこちらを見ている 南洋とはいえ、上半身裸である これには軽いショックを受けた 「う~~む! 遙るけくも、来たものかな~」と心の中で思った お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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