テーマ:夏目漱石(54)
カテゴリ:夏目漱石
漱石の『こゝろ』を読み返してみた。
人生経験を重ねてから名作を読むと、若かった頃に読んだ時とは別の思いを抱く。 そんな言い古された言葉が、何となくひっかかったからである。 さて、『こゝろ』を最初に読んだのは何時かというと、高校生の時である。 当時はそれなりに読書は好きではあったが、漱石の本を読むことに積極的だったかというと、決してそんなことはない。 ごく普通のパターンだと思うが、漱石の本は何冊か読んでおくのが高校生の義務であると言わんばかりの雰囲気があったためである。 さて、当時から30年ほどになってしまったが、ようやく『こゝろ』を読み返してみた。 確かに、10代で読むにと40代で読むのは違う。 そもそも『こゝろ』は、1914年、漱石が47歳の時に発表された作品である。 読者も、それなりの人生経験を積まないと、読むのが無理というのが本当だろう。 何が違うかと具体的に一つだけ挙げれば、死の問題である。 10代の頃の死のもつイメージは、極めて抽象的で現実感のないものであった。 が、40代になると、身近な人が亡くなるという経験をしてきた。 更に言えば、もしあのとき私がこうすれば、あの人は亡くなることはなかったという経験もしてきた。 すると、『こゝろ』で、先生がKに対して抱き続けた罪悪感は、現実的なことと感じられるのである。 なお、『こゝろ』は、当初は『心 先生の遺書』という題で発表され、その後『こゝろ』と改題されたそうだ。 今回の日記のタイトルで『心 先生の遺書』を用いたのは、岩波の全集でそうなっているからである。 過去日記では、漱石のことをほとんど書いていない。 が、2つだけ見つかった。 こちらとこちら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/12/21 06:33:05 AM
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