カテゴリ:E 【英国】および 英国での思い出
感情を抑制してマナーを持って議論をするのが民主主義の根底だと思うこと【復刻日記】
ただし、今回ちょっと書き直している個所がある ―――― ◇ ―――― 【復刻日記】 英国に「マークス・アンド・スペンサー」(以下 M&S と称する)というスーパー・チェーンがある 以前のダイエーの様な存在だろう 三代目当主マイケル・マークス氏(Lord Marks of Broughton)は男爵の爵位を持っている しかし英国貴族と言っても代々の英国貴族では無い このマークス家はポーランドからのユダヤ系移民 戦前は、ユダヤ系でも商業的に成功すると爵位を受けるという例は英国以外にもある ウィーンでもそう言うことは多かったし、例えば有名なロスチャイルド家(フランスではロチルド家)が男爵家だ ~~~~~~~~ 私の元妻の実家も欧州のある国の貴族だったが、ある時、ウィーンから男爵家の令嬢が輿入れしてきたというが、その家もそんなユダヤ系の血筋だったらしい 銀行と商船隊を持っていた有名な財閥だったとのこと (家系名は秘す) その令嬢は、六ヶ国から六ヶ国語の新聞を配達させて毎朝それを読んでいたという そう言えば、元妻も娘も遺伝なのか語学的才能がある もっとも、元妻の実家は、ハンガリー・ロシア・ドイツなどの家系と婚姻関係にあったという 欧州の上流階級は国境を越えての婚姻が盛んだったようだ ―――― ◇ ―――― このM&Sの3代目の当主 マイケル・マークス卿は、寿子さんという日本人と結婚していたが、その後離婚している このマークス寿子さんは現在日本に住んでいて大学教授であり作家でもある ある講演会の紹介ではこうだ ~~~~~~~~ <略歴> 正式名はThe Right Honourable Toshiko Lady Marks of Broughton 1936年、東京に生まれる早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京都立大学法学部博士課程を修了同大学非常勤講師をつとめたのち、71年にロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究員として渡英する76年、英国一のスーパー・マーケット・チェーンの三代目当主マイケル・マークス氏(Lord Marks of Broughton)と結婚、英国籍と男爵夫人の称号を持つエセックス大学現代日本研究所講師を経て、現在は秀明大学(もと八千代国際大学)教授とし日英間を行き来している又、『日英タイムス』を発行するなど、日英交流の場でも活躍中 ~~~~~~~~ 私はブックオフで彼女の5冊ほど著書を100円均一で買った なぜ彼女の本を五冊も買ったかというと、彼女の経歴が特殊だから面白いことが書いてあるかな?と思ったからである それから、ブックオフで買った100円という安さだ 私はこの五冊の内、昨晩『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』(草思社)という本を昨日、ざっと読んでみた 私の印象ではこのマークス寿子さんの著作には二つのメイン・ストリームがあると思う 1) 1936年生まれという年令だけあって、この頃の日本に対する保守的な批判 2) 海外の文化から見た日本への批判 『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』に限って言えば、私からすれば、特に瞠目するような鋭いユニークな意見でも無かった なぜなら、私は以前の商社マンという職業から、彼女が英国に比較して日本を批判しても、それは私にとってそれほど新味のある事ではなかった この人は数年前に一時ブームのようなものがあり、テレビ・ラジオにもよく出演していたが、日本や若い世代を批判する、いわが「頑固爺さん」ならぬ「頑固婆さん」風だった ただ、彼女の論法は「英国がすべての模範」的なもので、その点が引っかかった 得てして、一ヶ国の外国体験がある人は、その国を崇拝する傾向がある 私も英国に駐在したことがあって、いわゆる英国的なものはほとんど好きだ イングランドに限って言えば、人々は性格的に穏やかでリーズナブルだし、自然は最高に美しくやさしいし、気候も穏和である しかし、英国のすべてがいいというわけは無くて、私自身、英国人の隠れた嫌な部分をかいま見た経験がある ―――― ◇ ―――― 例えばその一つだが、ロンドン・ヒースロー空港の税関吏からひどい扱いを受けたことがある この空港の税関吏の一部はハッキリ言って、外国人の一部を狙い撃ちにしてサディスティックな喜びを感じている連中であることで国際的に悪名が高く、私だけが被害者ではない それも個人が単発的にする行為ではない 税関吏の一部(と信じたい)が連携したチームプレイだ 例えば、歌手のダイアナ・ロスが全身裸にされて身体検査をされたことがある その他にも色々トラブルがある 私はある年の、年に一度の休暇で英国からのイタリア旅行のツアーに参加した 英国に帰ってきて税関で、ローマで買った腕時計を申告した その時、担当した税関吏の目がギラリと光った 有無を言わせず私を別室に連れ込んで、私のスーツケースの他、持ち物すべて、服のポケットまで強制的に調べられた 時計を自主的に申告したのに、強制検査になった 挙げ句の果てはビデオカメラを一年前に赴任してきた、入国時に申告していなかったとわめきだした 確かにビデオカメラは英国の法律に沿えば、あの入国時に申告すべきアイテムだった 日本国内での購入日から赴任時のロンドンでの入国日まで半年以内だったから申告すべきだったのだ 半年以上経過したビデオカメラであれば申告不要となる しかし、普通はなかなかそこまで思いつかない ビデオカメラを申告させられた空港は経験がない 私を憎々しげに検査した係員は、今でも覚えているが金髪のディヴィスという男だが、(この姓名はウエールズ人に多い)その後、部屋を出て行ったままで私は一時間ほど、多分わざとそこで放置された ただ私を監視する意味か?若いインド系の女性係員が私の傍で椅子に座っている 私は彼女に「あなた達はこんな風なサディスティックなやり方をいつもしているのか?」と聞いた 彼女は黙ってうつむいただけだった まもなくデイヴィスが戻ってきた 「ピンク・ペーパー野郎め!」とつぶやいている ピンク・ペーパーというのは英国の日経新聞とでも言うべき「フィナンシャル・タイムズ FINANCIAL TIMES」という経済専門の新聞で、日本の駐在員は大抵読んでいる 黄色っぽいピンク色の新聞なので、知識階級以外の人間からはピンク・ペーパーと呼ばれる 英国はよく知られているように厳しい階級社会の国だ ―――― ◇ ―――― 英国ではアングロサクソンとケルトとの民族的対立に加えて、階級間の対立がある ウェールズにスォンジーという都市があるが、ある本には「ウェールズのスォンジーという小さな都市にも、タマネギをむいた時のように幾層にも重なった階級がある」と書いてあった そんなものだと思う 「イギリスでは音楽にも階級がある!!」 これは「クラース イギリス人の階級」(ジリー・クーパー著)【サンケイ出版】という本の帯に書いてあったものだ もっとこの帯を引用しよう ○ 貴族階級は、ハイドン、モーツアルト、バーゼルを好み、上流・中流は、ブラームス、マーラー、シューベルト、ベートーベンを好み、下流・中流は、チャイコフスキー、グリーグ、メンデルスゾーンを好む ○ 階級意識を見事に描いた英ベストセラーの完訳 音楽にさえも階級があるのだからましてや新聞や言葉、つまり英国英語にはもっともっと階級がある 以前ここの日記に書いたように英国では階級で読む新聞が、実にハッキリ分かれている このピンク・ペーパーはイングランドでは上流・中流階級の人間の典型である株式取引人や銀行家の巣窟であるシティーに勤める人間が読む新聞だ 私たち日本人の駐在員はもちろん英国の上流階級なんてものじゃないのだが、日本で日経を読む感覚でこのピンク・ペーパーを読んでいる 駐在員としてビジネスに必要な情報がある新聞だから読んでいるだけなのだが、日本人駐在員一般を、彼らは憎むべき「U」と同族と見なしているようなのだ 「U」とは「Upper Classアッパークラス 上流階級」のこと これに対して非上流階級は「Non-U」と称される この税関吏はあきらかに「Non-U」だから、有色人種のくせにピンク・ペーパーを読んでいる私を、一種の拷問ゲームの相手に選んだのだ 私とこの税関吏との間には激しいやりとりがあった 最後に、税関吏の方から「文句があるのなら、あんたは弁護士を呼んでもいいんだぜ」と言い出したが、私が仕事でつきあっている弁護士事務所は英国有数のもので、以前にプライベートで社宅のトラブルに一枚の手紙を書いてもらっただけで10万円近く取られた そんな高価な弁護士をしかも夜間に呼び出してはどれだけの出費になるかわからなかったから、それはがまんした それにもう夜も遅いし、旅行からの帰りで疲れていたからとりあえず早く帰宅したかった その内に開け放した部屋の外を、彼の上司らしい人間が通った この上司は私たちのやりとりの中身を知っているらしく、デイヴィスににやっと笑って見せて、ウィンクした 彼らは示し合わせてこういう風に厳しい取り調べをして、みんなで楽しんでいるらしかった 英国ならなんでも大好きという英国ファンが多い 私がこの事実を楽天のある「英国大好き」女性のブログにコメントした その時は、私はまだ楽天にブログを持っていなくて、bonbon さんのようにコメント専門だった 同調してくれると思ったその女性の答えたるや、こういうものだった 「どの国でもそんな人はいます」 そ~ゆ~ことじゃないでしょ? 優れて英国的なことでしょ? それに、紳士と言われる英国人の隠れた人種差別意識が露出した場面なのだ その女性は私の大学の後輩で、その他の事では気があっていたのだが、それから私はそのブログへは二度と書かなくなった 私も英国を懐かしむ気持ちは強いが、だからといって、英国の影の部分を隠蔽することなどしない ―――― ◇ ―――― このマークス寿子さんの他の本も読んでみるつもりで、他の本では英国と日本の文化比較にやや面白い箇所がありそうだ ただ今回は『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』の中から一部を引用してみたい マークス寿子さんは、この本の中で次のようなことを書いているがこの箇所には、私もなるほどと思った -------引用------ 第3章 しつけなんてもう必要ないのか 議論のやりかたになれること これまでの日本の社会では、議論というものがけんかと同じようにとらえられていれ、歓迎されることがあまりなかった(中略) しかし、互いに考えていることや感じていることを相手にはっきり伝えるときには、ヒステリックになってどなっていたずらに相手を傷つけたり罵倒したりせずに、毅然とした言葉で自分の意見を述べるというルールに慣れるようにべきである 反対に、相手の意見を聞く時も、ヒステリックになったり高圧的な態度をとるのではなく、理性的に相手のいわんとするところを理解するように勤めるべきで、(以下略) -----引用終わり------ まことにもっともで、文句のつけようがない 私が日頃、実行していることでもある (ウソでしょ?) (笑) ―――― ◇ ―――― この私の本文に対して当時 Kelly さんからコメントをいただいた ■ Kelly さんのコメント 彼女の著書を全部読んだわけではありませが、「男は~」とか「日本人は~」とかいう一括りにした高慢な姿勢にうんざりさせられました 下記は、私からのレスである ■alex99からのレス 本当のことを言うと・・・、私もラジオなどでの彼女のしゃべりを聞きましたが、いかにも「私だけが賢い」という態度で、いやな感じがしました 傲慢風だったし 私の日記も初めはそういう批判的な書き方だったのですが、もう少し彼女の本を読んでからにしたほうがいいだろうと考え直して、このように柔らかい書き方に書き換えた・・・という事情有り やはり Kellyさんも、そう感じられたのですね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[E 【英国】および 英国での思い出] カテゴリの最新記事
|
|