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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「100分de名著 小松左京スペシャル」宮崎哲弥 NHK出版 実は久しぶりに買って読んでみて、なおかつ録画していた番組も100分視聴したのであるが、遥かに宮崎哲弥の文章よりも、NHKの番組の方が良かった。プロの俳優の朗読や、アニメ化された作品の方が多くを語ってくれた。宮崎の文章は、新たな知見も多かったが、それ以上のものではなく、かえって内容を難しくするだけの知識の羅列であり、役には立たなかった。 素晴らしかったのは、改めて小松左京を思い出したことだ。高校生だった私に、世界(日本を含めた宇宙)を見ろ、未来を想像しろ、と促した恩人だったと思い出した(新書「未来の思想」)。SFというものを知らしめてくれた人だった(「果てしなき流れの果てに」)。 「地には平和を」(1963)は、偶然にも最近読んだ本と関係があった。『日本のいちばん長い日』の1945年8月15日のクーデターが「成功していた場合」どういうことが起きるのか、という問いかけだった。これがコンピュータ付きブルドーザーと言われた小松左京の実質デビュー作であり、やはり彼の膨大な著作の原点だったのだ。 「地には平和を」で、歴史の改変を行ったキタ博士は、タイムパトロールにこのように反駁する。 「悲惨だと?」「悲惨でない歴史があるか?問題はその悲惨さを通じて、人類が何をかち得るかということだ」「20世紀が後代の歴史に及ぼした最も大きな影響は、その中途半端さだった。世界史的規模における日和見主義だった」「日本の場合、終戦の詔勅一本で、突然お手上げした。その結果、戦後彼らが手に入れたものは何だったのか?20年を待たずして空文化してしまった平和憲法だ!」(24p) この「戦後」に対する明確な違和感。これが小松左京の出発点だった。 「日本沈没」(1973)は、高度成長期の終わりに、もう一度それを壮大なシュミレーションSFとして作ったものである。 「ゴルディアスの結び目」(1977)は、左京の思想の影響を与えたダンテ「神曲」の小松版地獄編である。 その地獄編を更に進めた未完「虚無回廊」(2000)。 未来を想像し、創造しようとした小松左京が、阪神大震災のルポを書いている途中に神経をやられて休筆し、東日本大震災で混乱している2011年の半ばに亡くなったことを知った。"未来"が彼を殺したのか?絵に描いたようなSF人生だったと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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