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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:考古学
「考古学ガイドブック」小野昭 シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊5 新泉社 ひとつの遺跡を深く掘り下げるシリーズ「遺跡を学ぶ」の、その別冊の5番目。とうとう「発掘作業」や「概論」を解説する本が登場した。 大学の考古学教科書をわかりやすく解説したような内容。或いは、博物館の図録でよくある小学生向け「発掘とは何か」を10倍詳しくしたような内容。高校生の考古学志望学生には必読文献になりそうだし、大学生にとっても役に立つだろう。私たちのような考古学ファンにとっては、所々に目から鱗の「技術」「考え方」があって、とっても面白かった。 例えば、 ・現代考古学では最新の探査機器や分析装置を駆使しているが、人の目と手の判断はまだ充分必要とされている。地層の中の0.2ミリほどのガラス片が太陽に反射して光るところから火山層の標準を発見したり、堆積層の微妙な違いを指で押して見当をつける技術は機械では無理だ。←発掘現場でいつも感心するのは、ホントに微妙な色の違いでどうして柱の跡が分かるのか、ということ。 ・22pの土器編年のわかりやすい写真解説はよかった。 ・復元模型の例として、群馬県西組古墳時代遺跡と長野県浅間縄文ミュージアムのジオラマを紹介していた。私は中部日本以北の博物館にはあまり行けていないので、これら復元のリアルさと解釈の仕方、文明発達の度合に驚愕した。あゝ日本全国の博物館を巡りたい! 特徴的なのは、21のイシューのうち後半7章は、現代における考古学という学問の課題について、著者の意見を積極的に展開している事だろう。 例えば、歴史記述の問題。多民族国家の外国では特に大きく問題になるが、日本でも問題にすべきだとする。改めて「邪馬台国は、日本国の問題として見るべきなのか?それとも客観的な存在としての歴史として見るのか?そんなことをすれば無責任だと非難されるのか?」 ←私たちは、改めて日本という国家ができる以前の歴史について、考えなければならないと感じた(いや、中世・近世、近代でも未だ日本列島には日本国ではない領土は広く存在していた)。 ←こう言われて初めて「もしかしたら、卑弥呼は魏国の一支国としての意識しか持っていなかったのかもしれない」という視点が生まれた。もちろん可能性に過ぎない。万が一、邪馬台国が魏国とまるきり同じ価値観を持っていた時、縄文から続く銅鐸文化という独自の価値観を発達させた弥生文化が邪馬台国と対立するのは、必然だろう。反対に、邪馬台国が魏の価値観と対立する時には、また違う歴史記述になるだろう。どちらを想定するかで、「歴史記述」は、全く違ってくる。 その他、文化財の保護、国際協力、歴史観等々、広く世界的視点からの考古学を語っていて新鮮だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年02月15日 23時55分08秒
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