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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
「かがみの孤城(下)」辻村深月 ポプラ文庫 13歳は、1日で「おとなになる」ことがある。それは奇跡なんかじゃない。ちゃんと理由のあることだ。もちろん私は物凄く焦(じれ)ったかった。下巻でキチンと伏線回収はされるのだけど、半分くらいの伏線は私は気が付いていた。上巻でみんなどうして気がつかないのか、これも中学生だから未熟なんだろうか、等々思っていた。でも「気付きたくない」という気持ちが(どこにも書いてないけど)みんなの中にあったとしたなら、分かる気もする(リオンだけは自覚的に避けていた)。ずっと温めていた幾つかの仮説と、あの危機の場面と、その直前の東条美織との会話で、こころの中で一挙に点と点が繋がったのである。 あの日が分水嶺だった。いつの間にかそこまで辿り着いていた、というわけだ。その日から、水は反対方向に流れ出す。 中学生には良い読書体験かもしれない。 この半世紀で、小学生の名札に名前や住所を書くことはなくなり、幼稚園児の集団登校はなくなり、車の送り迎えは当たり前になり、不登校は当たり前、イジメをどうやり過ごすのかは全ての子供が身につける技能になり、ランドセルはカラフルになって男と女の区別はなくなり、教師はPTA対策だけで深夜残業、精神疾患になり‥‥というような噂が私のもとに届く。みんなそれが当たり前という。それの何処が当たり前なんだろうか。私は理解しきれない。不登校の子どもも、だからではないけれども、理解しきれない。 この半世紀で、ムラ社会たる昔ながらの共同体は壊され、日本で数人の被害体験は瞬く間に拡大共有されて、すべての日本人の共通課題になる社会が到来しているのかもしれない。もちろん、アンタには分からんよ。そういう声も聞こえる。アンタは、その数人になったときの痛みを経験するはずもないからな。そうなんだろうな。だから時々こういう小説でメンテナンスをしている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年07月07日 21時22分31秒
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