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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「ペルセポリス1 イランの少女マルジ」バジリコ出版 マルジャン・サトラビ 絵を一目見た時、日本の漫画の概念とは大きく違う内容に違和感を覚えた。しかしやがてこれもマンガなのだと思う。しかも、かなりの傑作である。以下の絵が冒頭のページである。 1979年、10歳のマルジがイスラーム革命に出会う、イランイラク戦争が始まり、1983年独りでウィーンに疎開する処迄が第一巻である。 ヴェールの下に隠されているイラン女性の強(したた)かさ、賢さ、悩みを真正面から描き、あの時イランに「何が起きていたのか」、感情を抑制した、白黒をハッキリさせた絵で見事に描き切っている。 信仰と革命と戦争の日々。進歩的な両親のおかげもあり、10代とは思えない批判精神に富んだ社会の描き方である。 イスラーム革命のあと、政治犯が釈放された。彼らからマルジは直接「拷問」の話を聴く。そして革命家の叔父アヌーシュとの交流と死別(左翼革命がイスラム教の革命に転化した)、そしてうまいことにイラクとの戦争が起こり、国論は一つになる。爆撃されて死んでもおかしくない状況のなかで、マルジはそれでもイギリスのロックやヘヴィメタルの洗礼を受けていたりする。 ウィーンに行く前の晩、祖母はマルジに云う。「この先おまえはたくさんのバカに出会うだろう。そいつらに傷つけられたら、自分にこう言うんだ。こんなことをするのは愚かな奴だって。そうすれば仕返しなんてしないですむ。恨みや復讐ほど最悪なことはないんだから…。いつも毅然として、自分に公明正大でいるんだよ」 …思うに、これもイスラム教の教えなのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年03月20日 22時35分09秒
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