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2018年03月06日
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「土偶・コスモス」をMIHO MUSEUM編 羽鳥書店

2012年MIHO MUSEUMの展覧会の図録である。知らなかったが、ものすごく充実した展覧会だったようだ。美術館なので、視点は考古学的研究よりも美学的見地からのものになるが、もちろん考古学的知見を基に美術品を見ないと正しく見ることができないので、勢い、綜合的な「土偶図録」になった。美術品なので、写真も凝りに凝っている。発掘報告書の図がほとんどない代わりに、4方向から撮ったり(半分以上が2方向以上から撮られている)、手触りさえ分かるような鮮明な写真が撮られたりしている。図録を見るだけで、様々な感想を持った。

以下、私的感想メモ。
・草創期後半の相谷熊谷遺跡と早期前葉の小室上台遺跡の土偶は、上半身の女性土偶だが、その写実性は、どの時代よりも凌駕してるのではないか?と思うほどだ。特に小室上台のくびれや垂れ乳は凄い。だからこそ、頭部の位置に穴だけが空いているのが気になる。磨耗はしていないらしい。(小林達雄は前期まではナニモノカを形象化できないと説いている。だから、これは女とも思ってはいけないと。しかし、これが女でなくてなんなのだ、というのだ、と私は思う)。
・前期後葉前谷西や前期中葉釈迦堂、中期野首の板状土偶に、弥生時期の分銅型土製品との類似性が色濃く現れている事。時代と土地を隔てていることに却って意味を感じる。
・中期の女性土偶は、明らかに「産み」を表現しているが、一方で抽象度も増している。また、中期に土偶は五体を手に入れたにもかかわらず、故意の破壊が始まる。男性器土偶も同じ。果たして降りかかる災いの身代り(形代説)なのか。
・縄文のビーナス(中期前葉の棚畑)は歩いているようにみえる。また、頭髪は頭頂と頭横をくるくるに結っているように見える。ほとんど抽象的だが、うしからのお尻の描写だけは、生々しく写実的。
・後期には、ハート形土偶、仮面土偶、筒型土偶、みみずく土偶に見られるように、上を向く、肩をいかり腕を下に向ける、足を踏ん張る土偶が増える。そこにどういう物語があるのか。分かり易いのは、空から来た精霊を待ち受けるという物語なのだが。
・波状土器は、多くは「3、5、7」の奇数を意識している。中期以降東日本に事例が多い。3本指も多い。
・後期からは、土偶はさらに複雑なポーズ(合掌、屈折)が現れて、顔の表情も抽象度とバリエーションが増している。
・東北地方の亀ヶ岡文化では遮光土偶が有名。晩期前葉(BC1000)から後葉(BC600)まで五段階に分かれる。むしろ、縄文から弥生への過渡期であり、何かの大きな変動を感じ取っていたのかもしれない。
・後期後葉石川県の米泉遺跡の顔のない板状土偶(BC1300)をみると、分銅型土偶の始まりにもみえる。
・西日本では顔が発達しなかった。意識的に避けている。一方では仮面は発達する。西日本の神の概念に関係するのではないか?
・柳宗悦が民藝館全ての蔵品と代えてもいい、と云った岩偶(岩手県岩泉の晩期)遮光土偶の一種類と思えるが、後ろの渦巻き文様が独特。
・国宝山形県西ノ浦遺跡の縄文の女神の後ろ姿の写真のなんというなまめかしいこと!中期中葉。五体はない。顔は抽象。けれども、背中のラインは、現代もなし得ぬほどの芸術性がある。
・小林達雄御大の論文で幾つか異論はある。ただ、ひとつビックリしたのは、第二の道具(土偶、石棒、石剣、石刀、岩版、土版、石冠、土冠、御物石器)は、朝鮮半島、シベリア大陸沿、中国大陸の周辺地域にはほとんど見られない、と分析しているのである。確かに中国文明を除けば、縄文文化は、唯一無二の独自性があるように思える。
・大英博物館キュレーターによる「現代の土偶現象」では、手塚から諸星、果ては川端康成までの土偶現象を扱っていて、とってもユニーク。「蓑虫山人と青森」(青森県立郷土館)の図録を是非見てみたい。

2018年2月読了





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最終更新日  2018年03月06日 12時20分04秒
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