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カテゴリ:読書フィクション(12~)
第四章「念者」(4巻ー6巻)。ここから一挙に舞台は、江戸になる。第二部が、日置から離れた物語であることを、結局強く印象つける章になった。由井正雪の乱、別木庄左衛門の変と、歴史的事実を紹介して、竜之進を巻き込んだ牢人の乱から話を始め、2人の歴史的な人物が登場する。 1人は堀田正俊 。登場において、なんとその生涯の解説までしている。五代将軍の大老までなるのが決まっているので、この登場時には一万石の大名に過ぎない。「最後は非業の死を遂げる」とまで解説されているのであるが、反対に言えば、大老になるまでは死なないと宣言された。わたしはこの登場時、単なる脇役に過ぎないと思ったのだが、其の後重要な役を得るのだ。 「佐渡守」そしてこの「念者」で、影の主役は錦丹波である。しかも、支配被支配をめぐる話ではなく、戦国時代が終わり50数年、泰平の世に、生き方を模索して、娘は鞘香では死んだこととなり、嫡男の息子は非行に走ってなかなか治らない。恐ろしいほどに彼は子供のために尽くす。それがお家のためということもあるが、やることは時には常軌を逸しているので、正に「教育問題」が、この章の大きなテーマになっていることがわかるのである。 そして老中酒井雅楽頭。ちょっと名前が出ただけであるが、この人物がニ部においての最大の悪役となる。 そして新たな世代の中心人物、宮城音弥と錦丹波の息子の源之助が表舞台に踊り出すのである。しかし、源之助は心から挫折し、音弥は小姓として出世の階段を登る手前で次の章に移るだろう。 第五章「無宿溜(スラム)」(6巻-8巻)。なぜ第五章がこの題名なのかは、途中に判明する。竜之進は、日置で助けた日州との出会いで、江戸のまちづくりの人夫の杖突(現場監督)として、新たな仕事を始めていた。しかし、牢人の身分から変わるというだけで、これが彼の人生というわけでも無い。ただ彼がこのスラム街に興味を持ったのは工事現場監督が好きなわけではなく、おそらくどんどん人口が増えて「新しい街」が出て行くことに、何かの刺激をもらったからに違いない。「第三の道を探している」。読者の私には見当も着かない。 此処にきて酒井雅楽頭忠清がきちんと登場した。佐渡守が酒井雅楽頭の参謀的役割をしていることも判明。竜之進があれほど活躍しても、まだ正体に気がついていないのは少しどうかと思うが、忍びの使い方はなかなかである。彼らが(1)何処で結びつき(2)野望は何か(3)その動機は何か。白土三平は解明することを約束している(8巻155p)。これもどうやら未完に終わっている。 「異変」の節において、スラム街で医師の道無とサブ(カムイ)の叩く太鼓が古代の血を呼び起こす。白土三平がなぜここで、この重要な「山丈」を出さなくてはならなかったのか?この小さな共同体が白土三平の目指しているものなのか。山丈の「オォー、カムイー」という叫びは、何に対して叫んだものなのか。我々は、慎重に見定めなくてならない。よって、答は保留したい。この場で、サブ(カムイ)、竜之進、音弥、堀田正俊、道無、アヤメ、房州、日州が揃っていたことは、記憶しておかねばならない。 ん ただ、言っておかねばならないのは、第一部において、山丈の登場はいつも作品のテーマに係る場合だった(カムイの登場、白狼カムイの登場、日置大一揆)。このスラム街はこのあと、酒井らの陰謀によって潰されるのではあるが、その後も彼らは浪人や非人、放浪する民として漁業や土木工事などに全国に散らばることになる。この時点まではこれらが何らかの役割を果たすことになっていたのではないか。それと、影衆の役割も不気味である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年07月08日 08時19分27秒
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