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再出発日記

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2020年08月03日
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カテゴリ:邦画(12~)

開催が延びていた高畑勲展に行ってきた。アニメ制作に興味ある人だけでなく、アニメ映画が好きな人は必見の展覧会だったと思う。セル動画や絵コンテを展示して、昔のアニメを懐かしむ構成ではなく、60年代に高畑勲の演出が、如何に画期的で革新的だったかを明らかにするものであった。その革新性は、「アルプスの少女ハイジ」でも、「赤毛のアン」でも「火垂るの墓」「おもいでぽろぽろ」そして「かぐや姫の物語」でも、常に塗り替えられていったのである。「日本のアニメーション」を知るためには、この展示会は多くのことを教えてくれるのに違いない。

1968年「太陽の王子 ホルスの大冒険」で、高畑勲は初めて演出を任される。複雑なヒロイン造形、大群衆シーンの躍動感、アイヌの民俗叙事詩をモチーフに描く壮大な物語、スタッフの集団創作を可能にした緻密な企画意図の膨大な説明書などを見てもうもう圧倒された。いくつもの表や図を使って集団認識の共有を図っている。しかし時代が早すぎたのか、この映画はこけてしまう。高畑勲と宮崎駿は東映動画を去って、テレビの名作シリーズで新境地をつくる。



1973年、高畑勲、宮崎駿、小田部羊一は「ハイジ」のロケハンでスイスやドイツを訪れている。名作を生活感溢れる演出で一年かけてじっくりと作ったテレビシリーズの始まりである。原作のさまざまな改変を行なって、高畑・宮崎コンビはハイジの物語を「発見と解放の喜び」をファンタジーとしてまとめることに成功する。実際私は、社会人になった後に、DVDでずっとこれを見て辛い時期を文字通り救われた思い出がある。因みに冒頭、高原に着いた途端ハイジが着膨れの服を脱ぎ捨て下着姿で坂道を駆け上るシーンは、高畑勲が付け足した。


展示の中では、ここだけ写真撮影OKで、ハイジの世界を正確にジオラマにした部屋があった。おそらく、何処かの展覧会で作られたジオラマの流用なのだろうが、力作だった。汽車が動いていた。

「赤毛のアン」では、高畑勲は「痩せてギョロ目でソバカスだらけで赤毛」の少女を、登場時に可愛く描くことをさせず、やがて次第と美しくなってゆくという難しい課題を作画の近藤喜文に課した。しかも原作のアンのお喋りは、一切削らなかった。そういう演出によって、個性的な思春期の少女と育ての親を、「ユーモア」として描くことに成功させた。高畑勲によるシリーズ構成のためのメモの何という緻密さか。

高畑勲は絵コンテを描かない演出家として有名らしい。絶対書かないわけではなく、いくつか展示されている。確かにうまくはない。マルとして頭を描いていることも多々ある。宮崎駿は動画を描ける。しかし、設定と企画意図のノートは、おそらく高畑勲が圧倒していただろう。そうやって2人は切磋琢磨したのだ。

高畑勲は「ジャリン子チエ」(1981)から、日本を舞台にアニメを作り出す。「ゼロ弾きのゴーシュ」(1982)「柳川堀割物語」(1987)を経て、1988年「火垂るの墓」が作られる。原作を何処まで読み込むか。提示されたノートなどの資料は、我々に多くのことを教えるかもしれない。詳細なロケハンと共にリアルな作品が美術の山本二三、作画監督の近藤喜文・百瀬義行らと作り込み、永遠の夏の平和アニメのアイコンとなった。この作品では、色彩設定を場面場面で替えていった。「おもいでぽろぽろ」(1991)では、「山形編」でリアルさを出すために唇の動きさえアニメでリアルに再現した。一転「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994)では、もう溢れかえるような設定画にお目にかかる。百瀬義行と大塚伸治による大量のイメージボードは、狸の生態や、化ける方法とそのレパートリーに関して、一生懸命にやっても人間にはほとんど効果がない「しょぼい感じ」を出すことを目指したらしい。なるほど!そうだったのか!

そしてセルアニメを否定して、線で人物と風景を同時に描いて動かした「かぐや姫の物語」(2013)を遺して監督は逝ってしまった。






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最終更新日  2020年08月03日 09時59分33秒
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