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2021年10月26日
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テーマ:本日の1冊(3685)


「深夜の散歩」福永武彦 中村真一郎 丸谷才一 創元推理文庫

最近創元推理文庫で復刊してくれたそうだが、私は昭和53年版の講談社「決定版 深夜の散歩」の感想を書く。よって文庫版にはあるという福永・中村対談は読めてはいない。

たいへん面白かった。
紐解いたのは、本来、純文学畑の福永武彦・中村真一郎・(丸谷才一)が、大衆文学のミステリを縦横に語っているからである。もっとも、福永・中村は「モスラ」(61)の脚本も担当していたのだから、エンタメに興味がなかったわけではない。たまたまエンタメを書かなかっただけに過ぎない。主には「エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジン(「ミステリ・マガジン」の前身)」1958-1963年連載から編集。

福永武彦は探偵小説を紐解くことを「深夜の散歩」と称する。
‥‥ヴァレリー・ラルボーというフランスの作家は、読書を「罰せられざる悪徳」と呼んだが、探偵小説の場合には、そんなにたかをくくってはいられない。いい気になって歩き廻っていると、そのうち夜が白々と明けてくる。罰はたちまち下って、あくる日一日中眠くてふらふらする。上役には叱られる。恋人には笑われる。と分かっていても、真犯人を掴まえるまでは、散歩の途中でやめられないというのが、因果なところだ。‥‥
 都筑道夫君は、読書の限界時間は午前三時と言い、もしそれで終わらなかったら、平然と「終わりを先に見てしまい、安心して寝ます」と答えた。飛ばしたところは、翌日、改めて読むそうだ。
 心配性の椎名麟三君は、必ず最後の部分を読む。そして安心して読み始める。それを精神分析すれば、(1)犯人がわからないで、実存主義的不安に苛まれるのが怖い(2)著者は犯人が誰かわかっているのに、読者の方は皆目わからない、というのは著者から馬鹿にされているのも同然、負けず嫌いの椎名君はだから終わりから読む。←気持ちは物凄くよく分かるが、それを言っちゃおしめーよ、的な所ではある。
 赤鉛筆片手に、トリックから、動機から、いちいちマークして読み進むのは中島河太郎先生らしい。
 福永武彦自身はどう読むか。随時、仕事の合間に休んで読む。仕方ない。つまり我々と同じということらしい。

という冒頭から面白い。

ところが、残念なことに私はホームズとルパンを各一冊しか読んだことがない、人も驚く海外ミステリ初心者。福永武彦は、クリスティー「ゼロ時間へ」ブランド「緑は危険」クリスティー「死が最後にやってくる」‥‥と、まるで人をして読んできたような気にさせる軽妙な紹介に満ちている。もちろんラストは明かさない。他にもロンドン警視庁について一席ぶったかとおもいきや、なんとチャンドラーのマーロウ探偵を悪し様に言い、パリ警視庁のダックス警視、メグレ警部までに及ぶ。こうやって読んでいくと、ハリウッド俳優みたいに、詳しくないのに知ったような気になる。

実は「獄医立花登シリーズ」のタネ本を探す意図もあったのだが、当時の海外ミステリを縦横に語りながら、獄医どころかほとんど医者は出ていないのを確かめた結果になってしまった。藤沢周平の獄医シリーズは、もしかして完全オリジナルなのか?

未だ「ミステリ」というよりも「探偵小説」と言った方が通りが良かった時代の、「探偵小説は文学じゃないのか、どうなのか」というような問題意識が評者の中に時々芽生えていた時代の、もう深夜の隠れた趣味のような、教養の塊の3人の評論集だった。









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最終更新日  2021年10月26日 13時14分05秒
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