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テーマ:映画館で観た映画(8352)
カテゴリ:洋画(12~)
今月の映画評「すばらしき世界」 昨年観た映画は109作でした。その中で、ベスト5に入った作品です。 魅力は、主人公三上を演じた役所広司に尽きます。人生の大半を刑務所で過ごした主人公が、再出発をする話です。もはや若くはないし持病もある。今度こそまともな職に就こうと頑張るのだけど、社会はなかなか彼を受け付けない。しかも、アパートの騒音を注意するのに、ついヤクザまがいの強面を使って見せたりする。仏の顔と鬼の顔が共存する難しい役を、役所広司は絶妙な演技でやって見せました。隣に三上が越してきたら、私たちはどう対応するのでしょうか? 保護司やケースワーカー、町内会長、昔のヤクザ仲間、そして当初彼をテレビ番組で扱おうと取材を始めて途中で諦めた若い作家崩れの青年(仲野太賀)の目を通して、等身大の三上という人間が浮き彫りになっていきます。 西川美和監督は凡そ15年以上前の著作で「まだ諦めきれない、もう一度闘うんだ、やりなおすんだ、と歯を食いしばっているような人物たち。そういう悔恨だらけの、黄昏の中に佇むヒーロー」を描いてきた、と告白しています。今作も正にその通りであり、それは翻って私自身でもありました。 いろいろと我慢しなくてはいけないことが多く、理不尽なことも多い。「シャバは空が広い」それだけが、この「すばらしき世界」の正体なのかもしれません。 主人公の最後に、力を貰いました。 (原作・佐木隆三「身分帳」、2021年作品、レンタル可能)
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最終更新日
2022年01月15日 11時04分01秒
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