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2022年01月18日
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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:加藤周一
「雑種文化 日本の小さな希望」加藤周一 講談社文庫

加藤周一という「知の巨人」がいた。
現代日本に「思想家」という冠をかけ得る人がいるとすれば、私は先ずこの人を挙げなくてはならないと思っている。
思想家とは(1)その思想が生涯に於いて首尾一貫していること(2)その思想が独創的で且つ社会に多大な影響をもたらしたこと。コレを、私は「思想家」の定義にしている。
よって、
思想家とは、テレビに出ている(東大出の)有象無象のコメンテーターのことではない。
思想家とは、竹中平蔵のようなマヌーバーのような理論で以って政界に(ひいては日本社会に)多大な(悪)影響を与えたような人物でもない。
よって、吉田松陰は思想家ではあるが、その弟子の何人も政治家ではあったが遂には思想家たり得なかった。木戸孝允然り、伊藤博文ならば尚更。
また、いっとき戦後思想界を牽引したと言われる丸山真男と清水幾太郎のうち最後まで自らの思想を進化させていった丸山は思想家だが、安易に保守に寄り添った(転向した)清水は思想家ではない。反対に一般的には無名だが、戦中戦後を通じて日本的唯物論を論じた古在由重は重要な思想家である。

閑話休題。
没後13年。これから日本思想史に位置付けが始まる加藤周一の代表作を再読した。かと言っても、本書は加藤周一の論文集であり、日本の雑種性を正面から論じた文章はごく短い。また、私は幾つかずっと疑問があった。そのことを含めて、この機に探ってみたい。

「日本文化の雑種性」(「思想」1955・6)
⚫︎「伝統的な日本」と「西洋化した日本」で分けて考えると、「日本文化の特徴は、その2つの要素が深いところで絡んで容易に抜け難いところ自体にある。
←これが加藤周一の「雑種文化論」の概要である。なんだ、当たり前のことじゃないか、と考える人は多いだろう。加藤周一がこれを堂々と論じてはや半世紀以上。誰もが堂々と言えるようになったことが、改めてこの論文の影響性のひとつかもしれない。もちろん加藤周一は「西洋化」だけを問題としていない。「神ながらの道」があった古代に「仏教化した日本」も同じように、「二つの要素が深いところんで絡んで」いるのは、私たちが日々実感するところだろう。

⚫︎ キリスト教圏の外で、西欧の文化がそれと全く異質な文化に出会ったら、どういうことがおこるか、それが日本文化の基本的な問題である。
←雑種化は多くが認めることになった。実際加藤以前にもそのことを論じた人はいた。では、雑種化そのものは、未来の日本にどういう意味を持たせたら良いか?という問いかけをしたのは加藤周一の「独創」だった。そのためには、加藤周一は、もう一編文章を書いて寄稿する必要があった。

「雑種的日本文化の希望」(「中央公論」1955・7)
西洋文化が日本に入って雑種化した時に、何が残って何が残らなかったか、それが雑種化の「意味」のひとつになると加藤周一は言う(戦後民主主義の不可逆性)。もう少し具体的に言うと西洋伝来の民主主義という考え方、『「社会科教育を受けて成長した子供」「選挙権と教育を含めて原則上の男女平等を得た女性」「土地を得、得たことを当然と考えはじめている農民」「訓練された組織労働者」「戦前よりも世界情勢に敏感になった知識人」』これらのことは「ものの考え方や感じ方の変化がおこって容易にもとに戻らぬものがあるだろう」と加藤周一は分析している。←それから67年が経った。このうち「組織労働者」だけは大きな後退が起きた。しかし、戦前までは後退してはいない。「子供たち」はまた別のステージに上がっているだろう。

非キリスト教的世界でのヒューマニズムの発展が、文化の面、特に思想・文学・芸術の面でどういう形を取り得るかという見通しを立てることは、この当時の中国・インドの問題ではなく、日本の問題であった。加藤周一は、そこに日本の雑種性の「小さな希望」を見出している。近代的合理主義の背景に、「プロテスタンティズムの倫理」を日本に求められないとすれば、何がその思想を支えるのか。朱子学にしろ、実存主義にしろ、日本人の民衆の根に降りはしなかった。マルクス主義「のみ」が、「西洋伝来のイデオロギーを日本の大衆の道具に使おうとした」。しかし外国で既に出来上がった型を輸入したために「日本の特殊性に応じたイデオロギーの型を生む」には至っていない。という。

「それ」はどうしたら生むのか。

以降、いろいろと述べているが、実は「日本の特殊性に応じたイデオロギー」「小さな希望」は何処にあるのか。遂には具体的には語らなかった気がする。

ただ、雑種文化だからこそ、優れたものを生み出す可能性がある。そのことまで言及した人は、加藤周一だけだったことは強調するべきだと思う。

1974年「文庫版あとがき」
‥‥私がここで言おうとしたのは、現代日本の文化の雑種性に積極的な意味を認めようではないか、ということと、対外的には、排他的でもなく、外国崇拝でもなく、国際社会のなかでの日本の立場を、現実に即して、認識しようではないか、ということであった。

1974年、加藤周一は既に「日本文学史序説」を著し始め、日本文化の姿の全体を明らかにしようとした。しかし、「現実に即して」どういう「日本の特殊性に応じたイデオロギー」を用意するのが、国際社会での生きる方向なのかは、遂には著さなかったように私は思う。←それで良いよね。

いま、「特殊なイデオロギーがないこと」もしかしてそれこそが日本の生きる方向なのかと、これを書きながらふと思った。

あ、「ずっと思っていた疑問」について、展開できていないですよね。なんか、ぐだぐだした文章になっています。昨年の夏から書き始めて、途中放り投げ、また書き始めたので、こんな感じになっています。つまり、今回再読してもハッキリわからなかったんです。かつて高校生の時に梅棹忠夫「文明の生態史観」で、日本の地政的な立場がアジアよりも西欧的な文明化への道を歩もうとしている、という「わかりやすい説」に私は影響されました。大学時代に加藤周一はそれを明確に批判した文章を読み、生態史観を卒業しました。小松左京の「未来学」を読んで、じゃあ日本の未来の青写真はどうなのか、と青臭い青年は未来が気になって仕方なかったのも、この頃です。マルクスの「共産党宣言」を読んで、「日本型の革命」は何なのだろう?と思ったのも、この頃です。柳田國男は「日本人の本性は事大主義である」という。そんな日本人の何処に希望があるのか?と思い、民俗学の講師と夜を徹して討論したのもこの頃です。その中で、「いま・ここ」主義の日本の文化を、国際的視野と歴史的知識で眺めながら半世紀論じ尽くした加藤周一の言説に、その「回答」があるのではないかと、ずっと約40年間思ってきた私です。加藤周一の著作に手をかけて登って眺めてみたら、未来を見渡すことができるのではないか?有為な若者だった私も、少しは何か役に立てることができるのではないか?とずっと思っていた。

青年老い易く学なり難し。
むしろ、終わりが見えてきた。
あと10年で、形を作りたい。

未だよくわからない。もう少し再再読してみたいと思う。





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最終更新日  2022年01月18日 14時45分12秒
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