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イングマール・ベルイマン「ファニーとアレクサンデル」 元町映画館
2018年も11月になった神戸ではアートヴィレッジセンターと元町映画館が共催(?)で、イングマル・ベルイマン生誕100周年映画祭をやっていました。まあ、全国どこでもやってたのかもしれませんが、よくわかっていません。 というわけで、相変わらずヒマなのぼくは、さっそく出かけて、ボーっと映画館の椅子に座り込むことになるのです。知らない映画ばかりなので、わくわくするのですが、見終わると結構考え込んだりもします。まあ、まとめてブログに書こうと思っていましたが、この映画は違いました。見終えてため息でした。 「ああ、これがベルイマンなわけか?やっぱり、すごいやん!」 画面が暗くなって、劇場が明るくなった時に、何ともいえない、(いろいろいってるけど)、充たされた感じで浸り込んでしまいました。 5時間を超える大作「ファニーとアレクサンデル」です。堰堤から水が流れ落ちているシーンで映画が始まりました。 さあ、ここから5時間や! 画面に紙芝居のような小さな舞台が映し出されています。人形劇かな?舞台の向こうからこっちを見ているめがあります。この少年の、何ともいえない美しさ。目か?全体の雰囲気か?少年が美しいなんて、そう感じている自分が不思議です。 こんなふうに、詳しく思いだそうとすると、もう一度見たくなる映画でした。観終わって、もうう何日もたつというのに、一つ一つのシーンが、何の脈絡御なく思い浮かんでくるのです。 この写真に、大人の女性が映っているということが、映画を見る以前のぼくにはわからなかったと思います。 少年の美しさにとどまりません。可愛らしい少女の毅然としたセリフ。おチビちゃんたちを集めておならをぶっぱなすオジサン。メイドの部屋にしけこんで大きな胸にむしゃぶりついたかと思うと、いきなり切れる好色おやじ。悲しみに絶叫する妻。聖職者として神を騙る偽善者。美しい子どもを鞭打ち続ける音。サディスティックな空気の中で、無言のまま立ち続ける女たちのまなざし。全身炎に包まれて燃え上がる女。母の家を去る娘を乗せた馬車がすすんでゆく木立。 「プロローグ」「第一部:エクダール家のクリスマス」「第二部:亡霊」「第三部:崩壊」「第四部:夏の出来事」「第五部:悪魔たち」「エピローグ」 ほとばしる川の流れが、堰堤を落ち続けています。この長い長い映画は、北欧の女優の家族の、たかだか二年ほどの出来事を描いているに過ぎないのです。しかし、ぼくはこの数時間の間に、ぼくが映画館で観たがっていっるあらゆるシーンを見たように思うのです。それは錯覚なのでしょうか。 スリル、サスペンス、危機一髪のドキドキ、湧き上がる歓喜。川は流れ続けています。水は、繰り返し、繰り返し、堰堤を落ちてゆきます。誰かが死に、新しい命が生まれます。少年はこれからも、ずっと、亡霊たちから逃れることはできないのです。 明るくなった映画館の座席で、ぼんやりしていました。5時間ほどの時間に繰り広げられた映像がもう一度襲いかかってくるようです。 興奮したり、涙がこぼれたりすることとは、また違う、長い長い小説を読み終わって、読み終えたこともいっしょに満足しているような、ぼんやりとした充足感。 小説世界が、何の脈絡もなく湧き上がってくることが、一緒にあるうれしさを連れてくるような感じでしょうか。 しばらく座り込んで、外に出ました。その映画を、映画館で観たことの満足感。ぼくのなかでベルイマンは伝説になったような気がしました。 監督:イングマール・ベルイマン 製作:ヨールン・ドンネル 脚本:イングマール・ベルイマン 撮影:スベン・ニクビスト 美術:アンナ・アスプ キャスト ペルニラ・アルビーン :ファニー・エクダール バッティル・ギューベ :アレクサンデル・エクダール アラン・エドワール :オスカル・エクダール(父・ヘレナの長男) エバ・フレーリング :エミリー・エクダール(母) グン・ボールグレーン :ヘレナ・エクダール(祖母) ボリエ・アールステット:カール(ヘレナの次男) クリスティーナ・ショリンリディア(カールの妻) ヤール・キューレ:グスタヴ・アドルフ(ヘレナの三男) モナ・マルム:アルマ(グスタフの妻) ペルニラ・ヴァルグレーン:マイ(グスタフの愛人) エルランド・ヨセフソン:イサク(ヘレナの友人) ヤン・マルムシェー:ヴェルゲルス主教 原題 「Fanny och Alexander」 1982年 スウェーデン・フランス・西ドイツ合作上映時間 311分 2018・12・03・元町映画館no15 ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.20 11:09:02
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