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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2022.03.20
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​​ジッロ・ポンテコルボ「アルジェの戦い」シネマ神戸
​ ここのところの、あたたかい好天続きに気をよくしていましたが、今日はうって変わって朝から雨です。こういう日は活動力ゼロになるシマクマ君ですが、今日はCinemaKOBE「アルジェの戦い」の最終日です。監督はジッロ・ポンテコルボ、確かイタリアの人です。億劫を奮い立たせて出かけました。​
 来た甲斐がありました。最高!でした。街の寒さを忘れる興奮でした。
 1966年の映画で、その年のベネチア映画祭金獅子賞の作品です。テレビの洋画劇場でも放映されたことがあるらしいので、案外知られているかもしれない作品すが、ぼくには50年前に、どこかの団体の自主上映で見た記憶だけがありました。
 ストーリーも映像も記憶にありませんが、ドキュメンタリー映画だと思い込んでいました。実際の映画は、たしかにドキュメンタリーのタッチではありますがドラマでした。
 フランスの植民地だった​アルジェリアの独立闘争​を描いていた作品で、舞台はアルジェリアの港町​カスバ​です。
​ 民族解放戦線(アラビア語:جبهة التحرير الوطني、フランス語:Front de Libération Nationale)FLNの銃や爆弾によるテロ、フランスの警察、軍による取り締まり、拷問、ギロチンによる死刑のシーン、フランス系住民によるアラブ系住民に対する蔑視、差別、迷路のように入り組んだカスバ街とそこで暮らす民衆の姿、それぞれを描いたシーンは「ドラマ」であることを忘れさせる迫力でした。ドキュメンタリーだと誤って記憶していた自分に納得しました。
​ 映画は​民族解放戦線​の幹部であった4人の男の死を描いていていて、写真は、中でも武闘派の一人ですが、印象に残ったのは画面に登場するアルジェリアの民衆、フランス系の市民たちの「眼」でした。テロを組織し実行する主人公たちや、それを鎮圧するフランス軍の指導者たちの表情は、いってしまえば演劇的ですが、その他大勢の人たちの表情は、それぞれ「恐れ」、「いらだち」、「怒り」、「哀しみ」のどれなのかを確言することはできません。そういう「目」だとしか言いようのない表情で、映画が描く出来事を支えていました。​
 この映画から10年あまり後に​エドワード・サイード​​「オリエンタリズム」(平凡社ライブラリー)​で批判したヨーロッパの視線が、この作品では如実に描かれているのを感じました。
 金獅子賞を取ったベネチア映画祭フランソワ・トリュフォー以外のフランス系の人たちが「反フランス」映画だとして、全員退席したというエピソードがあるそうですが、シーンに映し出される表情が「植民地主義」の正当性を完膚なきまでに批判していることは明らかで、フランス系の人びとにとっていたたまれなくなる作品だったでしょうね。
 それにしても、今どき、この映画を上映してくれたCinemaKOBE拍手!です。この映画館は、こういう珍しい作品をやってくれるのですが、館内に「喫煙室」があるというのも今どき珍しい映画館です。がんばって続けてほしいですね。
 そういえば、帰り道で思い出しました。この映画のラストシーンは1962年アルジェリア民主共和国の独立の様子ですが、それを承認したド・ゴール大統領に対するフランスの右派による暗殺計画については「ジャッカルの日」(角川文庫)というフレデリック・ファーサイスの傑作小説と、それを映画化したフレッド・ジンネマンの同名の名作がありましたね。
 「民族自決」「反コロニアリズム」、「ポストコロニアリズム」は20世紀後半の常識になりましたが、「覇権主義」、「帝国主義」は本当に顧みられたのでしょうか。
 まあ、「コロナ騒ぎ」に加えて、新たな戦争まで始まりました。国家や民族に関してインチキ臭い物言いが横行していますが、映画が見せてくれた視線を忘れたくないですね。
 それにしても、シマクマ君はこういう映画が好きですねえ。20代のころからそれは変わらないようです(笑)。

監督 ジッロ・ポンテコルボ
製作 アントニオ・ムース  ヤセフ・サーディ
脚本 ジッロ・ポンテコルボ  フランコ・ソリナス
撮影 マルチェロ・ガッティ
美術 セルジオ・カネバリ
編集 マリオ・セランドレイ  マリオ・モッラ
音楽 エンニオ・モリコーネ  ジッロ・ポンテコルボ
キャスト
ジャン・マルタン
ヤセフ・サーディ
ブラヒム・ハギアグ
トマソ・ネリ
ファウジア・エル・カデル
ミシェル・ケルパシュ

1966年・121分・イタリア・アルジェリア合作
原題「La Battaglia Di Algeri」
配給:コピアポア・フィルム
日本初公開:1967年2月25日
2022・03・18-no37・シネマ神戸no5
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最終更新日  2024.07.15 18:13:21
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