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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2022.05.12
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​​​ ​糸井重里「ボールのようなことば。」(ほぼ日文庫)​
​​ なんだか久しぶりの​糸井重里​です。「おいしい生活」とか「不思議大好き」とか、いまとなってはどこの、なんのキャッチコピーだったのかわからないのですが、「彗星のように登場した、元ペケペケ派!コピーライター。」として知ったのが40年前です。「コピー・ライター」という職業名を普通名詞にした人というのが、シマクマ君の定義なのですが、詩人で評論家の吉本隆明が、今から10年ぐらい前に亡くなった前後、彼の生前の講演を、音源のままCD化してヒット商品に仕立て上げるという離れ業には、感心した記憶があります。​​
​​​ で、最近、松本大洋「ルーヴルの猫」、「かないくん」と、立て続けに糸井重里がらみで出会って、気になって手にしたのが、この本、「ボールのようなことば。」(ほぼ日文庫)でした。2012年に出版されている文庫本ですが、「みっつめのボールのようなことば。」(ほぼ日文庫)まで出ているようですから、ヒットしているのでしょうね。
​​​
​​​ これが裏表紙ですが、ネットで見ると、三冊とも表紙、挿絵は松本大洋のようです。
 で、内容はというと、全編、糸井重里の、まあ、箴言集です。だから、糸井重里的「ことば」が嫌いな人は「きらい」が凝縮されていますから、たぶん無理です。ぼくは、ついていけるような、いけないような、中間地帯の人です。​​​
世の中はね、
男と女とコロッケしかいないんだから、
仲良くしなきゃだめだよ。
​ こういうのに出会うと、うまいもんだと感心しますね。でも、たとえばこんなのもあります。
「わからないですね」って、しっかり言える人って、
ぼくはやっぱりかっこいいと思うんですね。

吉本隆明さんの口からも、よく、
「わからないですね」ということばを聞きます。
一昨日、原丈人さんにお会いしたときにも、
すっと答えそうな質問に、
「わからないですね」ということばが返ってきました。
このおかげで、別のさまざまな答えに、
逆に真実味が増したという気がします。
ぼく自身のことを思い出してになすと、
この「わからないですね」を、
ちゃんと言えるようになってから、
まだ10年くらいのような気がしています。
自分のことだから、かっこいいとは言えないけれど、
言えるようになってよかったじゃないか、
という気持ちはあります。

「わからないですね」が言えるようになると、
ものすごくいいです。
なにがどういいのか、うまく言えないんですが、
とにかく息がらくになると思います。(P148~P149)
​ ​​​なんというか、吉本隆明原丈人と、ご自分の糸井重里を並べている、ちょっと考えつかない、このバランス感覚がすごいと思いますね。
 ちなみに、原丈人というのは、「公益資本主義」とかっていってて、アベとかキシダとかいう人達のブレーンしてる人ですね。団塊世代より後の世代のトップ・ランナーとかの一人でしょうね。​​​

 吉本=戦後、糸井=団塊、原=団塊以後という並びです。で、おっしゃっていることとは別ですが、この並べ方に、ぼくは、なんだかアザトさを感じたりしちゃうわけです。なんか、お商売がお上手っていうか。
 でも、その次に、こんなふうなのがあるんです。
原爆が落とされたおかげで戦争が終わった、
などという理屈が、
ちょっとでも正しく聞こえたとしたら、
「それはもう、とてもおかしいことなんだよ」と、
ぼくは言いたい。
いや、仮にその理屈が正しいとしたって、
ぼくは正しくない側にいるつもりだ。(P245)
​ とか
憶えていようと思ったわけでもないのに、
忘れないことは、いっぱいある。
なんでも、
こんなに憶えているもんなんだと知っていたら、
もっと丁寧に生きてこられたかもしれない。(以下略・P275)
​ ​​​​とかね。
 で、こういうのに出会うと、「まあ、いいか」と思うわけです(笑)
 この本の表表紙と裏表紙を並べるとこんな感じになりました。この人間関係というか、ここにいる人たちが、ぼくには、なんだかとても遠いですね。知っているようで知らない。本のなかの「ことば」が、彼等に「消費」されるということが、たぶん「よくわからないんです。」
 まあ、それにしても、松本大洋の表紙も、挿絵も、とてもいいですね。売れるはずです(笑)
​​​​


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最終更新日  2022.05.12 00:10:26
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