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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:アジア映画(05・06)
墜落した米軍飛行士、はぐれものの北と南の兵士、彼らは導かれるように地獄絵の朝鮮戦争の世界から、戦争が始まったことも知らない山奥のトンマッコルへやってくる。宇宙を思わせる星々が彼らを迎え、久石譲の音楽が流れる。‥‥‥この時点でこの作品は宮崎アニメの骨換奪胎なのだと気がつく。『風の谷のナウシカ』の風の谷のようなトンマッコルで、異邦人が自分の姿を取り戻す物語である。しかし宮崎アニメがついに正面から描かなかった戦争を、ぎりぎりまでリアルに描いたという面で画期的である。ラストの丘の上での残酷で悲しい『美しさ』は必見。
監督 : パク・クァンヒョン 音楽 : 久石譲 出演 : チョン・ジェヨン 、 シン・ハギュン 、 カン・ヘジョン ハングル講座の先生から感想を聞かれたので『チェミイッソ(面白い)』といったら、『私は面白くなかったです。あんな村はありえない。滑稽無等ですね。』と意外な答え。韓国でもそういう意見はそうとう大きいらしい。しかし、私たちはファンタジーなんだから滑稽無等は当たり前、その中に真実があると見るのであるが、韓国の人たちにとってはお父さん、おじいさんが朝鮮戦争で大勢死んだわけだから、そんなふうには見れないのかもしれない。それほどにお隣の国の戦争の傷は深いのだということなのだろう。 「アメリカとともに戦争が出来る国へ」『美国(アメリカ)へ』『美しい国へ』の安倍内閣が今国会の最重要課題に推している教育基本法が11月10~14日の間に強行採決の危機にさらされている。ところがいまだに『なぜ教育基本法を変えなくてはならないのか』まともに答弁できていない。管理教育の締め付けがいじめや履修漏れを呼んだのに、基本法を変えるとそれがさらにひどくなることがまだ国民に浸透しきらないうちに拙速に採決に持ち込もうとしている。情勢と解説は2日の「教育基本法強行採決阻止へ今が頑張りどき」にも書いた。ぜひとも世論を盛り上げていきたい。 北の兵士がトンマッコルの村長さんに聞く。「あなたはいつもニコニコしているだけ。それでこの村民を見事に統率している。秘訣は何ですか。」村長さんはニコニコして答える。『たくさん食べさせているだけだよ』思うに、『平和の条件』の最重要課題だろう。管理教育などとは無縁の世界がここにある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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あ、珍しくTBが入った・・・
この前、知り合いの韓国の映画人とこの作品の話をしました。 実際に賛否両論だったらしいですね。 彼は、現実世界に沢山の問題を抱え、表現の自由を突如として手にしてからまだ二十年経っていない韓国の映画には、良くも悪くも美しいものからどす黒い物まで、本来秘めておくべき沢山の欲望までもが赤裸々に描かれていると語っておりました。 外国の人には、その辺理解して欲しいと。 映画が、リアルな社会的ストレスと密接に結びついているという事のようです。 この映画の賛否両論は、正しくそういう葛藤なのでしょうね。 (2006年11月04日 01時15分41秒)
スミスが「実は・・・」と言って連れてった先がよく判らなかったので、
墜落とかした米軍の武器を隠していたのかと思っちゃいました。 でも、重傷負ってたので、それは不可。 近くで墜落した米軍輸送機に連れて行ったのですね。 (2006年11月04日 03時38分46秒)
必要だと思える部分もあるのですが、方向が逆。
いじめに遭ったことのない、常に優秀だった方々の理想論机上論で語って欲しくない。 (2006年11月04日 11時10分00秒)
ノラネコさん
TBが入って私もうれしいです。 「本来秘めておくべき沢山の欲望までもが赤裸々に描かれている」‥‥‥映画というものは本来そういうものなのですが、急激に自由にいろんな作品が作られるようになった韓国の人たちにとっては、戸惑う人も多いのかもしれません。分かるような気がします。 (2006年11月04日 12時50分10秒)
ひらりんさん
>スミスが「実は・・・」と言って連れてった先がよく判らなかったので、 >墜落とかした米軍の武器を隠していたのかと思っちゃいました。 >でも、重傷負ってたので、それは不可。 >近くで墜落した米軍輸送機に連れて行ったのですね。 ----- あっ、あれは米軍輸送機だったんですね。スミスの飛行機だと思っていました。私こそ勘違いしていました。すみません。 (2006年11月04日 12時54分40秒)
ポンボさん
>必要だと思える部分もあるのですが、方向が逆。 >いじめに遭ったことのない、常に優秀だった方々の理想論机上論で語って欲しくない。 ----- 間に合わないかもしれないけど、改正案はほとんど必要な『改正』はありません。出来るだけ整理したいと思っています。 ところで、『常に優秀だった方たち』はおそらく『いじめる側』か『傍観者』に位置していたと思います。 (2006年11月04日 12時57分05秒)
当方のような拙い記事へのTB、ありがとうございました!
村長さんの言葉、とても心に残りました。 人として生きるための基本は、そこにあると思います。 韓国でも当然大絶賛だと思っていたのに、実際は厳しい評価なのですね。 現実をつきつけられたようで複雑な思いですが、だからこそ、“外国人”が観て感動できる映画は、高く評価されて然るべきだと思います。 (2006年11月04日 22時14分57秒)
村長さんの言う「たくさん食べさせているだけだよ」
これは本当に最重要課題ですよね。 核兵器を作るお金があるのなら、国民にお腹いっぱい食べさせてあげてほしいです→かの国の支配者さん (2006年11月04日 23時22分21秒)
かし丸さん
>当方のような拙い記事へのTB、ありがとうございました! > >村長さんの言葉、とても心に残りました。 >人として生きるための基本は、そこにあると思います。 > >韓国でも当然大絶賛だと思っていたのに、実際は厳しい評価なのですね。 >現実をつきつけられたようで複雑な思いですが、だからこそ、“外国人”が観て感動できる映画は、高く評価されて然るべきだと思います。 ----- コメントありがとうございました。 私はあの言葉は韓国人にとっては、もっと響く言葉なのだろうと思っています。『マニボゴ(たくさんたべる)』というのは、日常の挨拶の言葉でもあるからです。『ご飯食べた?』『ご飯食べろよ』という言葉は韓国映画でも頻繁に使われます。「たくさん食べさせる」というのは基本的人権を認めて生活を保障しているんだ、というぐらいの意味にもなるのではないでしょうか。 (2006年11月05日 08時45分57秒)
ミチさん
>村長さんの言う「たくさん食べさせているだけだよ」 >これは本当に最重要課題ですよね。 >核兵器を作るお金があるのなら、国民にお腹いっぱい食べさせてあげてほしいです→かの国の支配者さん ----- ほんとそうですね。情報が公開されていたないので何が起きているのかさっぱり分かりませんが。 日本でも、アメリカに三兆円あげるくらいなら、年金者や障害者に優しい政策が出来るはずなんですがね。 (2006年11月05日 08時49分06秒)
この映画の感想は、滑稽なファンタジーだとか、宮崎映画に似ているだけだとかいうものが多いようだが、私の率直な感想は、この映画のテーマの「裏側」を自分(日本人)がどれだけ想像できる(想像できていた)のだろうか?という事だった。
世界史の中で、数行で学んだ”朝鮮戦争”は、自分にとって、歴史上の出来事の一つでしかなかった。 少なくとも、この映画を観るまでは。 朝鮮戦争が起きたのは、今日にいたるまで、日韓関係に傷を残した第二次世界大戦の後。 疲弊していた韓国に、アメリカを含む大国の干渉のもと朝鮮戦争(はっきり言って内戦)が起きて、再び韓国民間人は戦争の中に有無を言う自由もなく突入した。 その結果、今も2つに分断したままの国の事実。 韓国民間人は、心のどこかに、その事実を完全に消し去る事なく、現在も生活しているのではないだろうか? そして、あえて言えば、朝鮮戦争の頃、敗戦復興の中にいた日本は彼らの国で起きた、その”内戦”により”ビジネス”チャンスを得たという事。 この、日本と韓国の史実に対する認識の温度差の中で、自分を含む日本人に韓国民間人の気持ちが、どれだけ想像できるのだろうか? この映画が、ファンタジーでも、宮崎もどきでも構わないし、言うまでもなく、映画をどう見ようとその人の自由だと思う。 しかし、少なくとも、この映画は、2つの事を如実に表わす事のできている映画だと思う。 まず、映画の評価などというのは、受けての想像力の問題次第なのだという事。 そして、今、韓国で生きているこの韓国人監督の映画は、他国の世界史の中で数行で語られる韓国史実の「裏側」を語っている(語ろうとしている)という点において、秀作であるという事。 これが、韓国映画は”JSA”しか観た事が無く、熱烈な韓流ファンでもない私が、この映画を観て秀作だと感じた理由です。 (2006年11月05日 12時13分03秒)
appleartさん
熱意のこもったコメントありがとうございました。 > 朝鮮戦争が起きたのは、今日にいたるまで、日韓関係に傷を残した第二次世界大戦の後。 疲弊していた韓国に、アメリカを含む大国の干渉のもと朝鮮戦争(はっきり言って内戦)が起きて、再び韓国民間人は戦争の中に有無を言う自由もなく突入した。 >その結果、今も2つに分断したままの国の事実。 >韓国民間人は、心のどこかに、その事実を完全に消し去る事なく、現在も生活しているのではないだろうか? そうなんだろうと思います。 戦争を描こうとしたことでは、ジブリアニメを超えていると私も思います。『シュリ』にしても、エンタメ映画の裏に南北分裂の悲劇があるからあそこまで韓国でヒットしたのだし、日本人にも新鮮でした。今はその新鮮さが少し薄れているのかもしれませんね。 韓国映画にはそういう秀作がたくさんあります。骨肉争う朝鮮戦争を正面から描いた『ブラザーフッド』、光州事件が韓国社会に与えた深い傷を描いた『ペパーミントキャンデー』、庶民の立場から独裁政権を描いた『大統領の理髪師』、戦争のない兵役の悲劇を描いた『コースト・ガード』‥‥‥。『裏側』を知るにはもってこいの秀作群です。 (2006年11月05日 16時51分00秒)
足跡から訪問させていただきました。
同じ映画を観ての感想も、とても奥深くまで見つめていらっしゃるので、「そうだったのか」と改めて感じることが多かったです。 ありがとうございました。 「韓国ではファンタジー映画はヒットしない」と言われていたとか。 私は勉強不足でよく理解していませんが、ファンタジーでは片付けられないような、深い傷跡がいまだに残っているということでしょう。 村長さんの言葉は、心の豊かさと満足を表していて、それが教育の場でも他でも、すべてに通じると思うのです。 (2006年11月05日 17時12分35秒)
魔法使いチョモチョモさん
コメントありがとうございました。 韓国の人の間で評価が二分しているといっても、韓国では去年の一番のヒット作だし、ファンタジー映画を韓国にアピールした功績は大きいでしょう。私が韓国貧乏旅行で一夜をともにしたキム君にしても『となりのトトロ』を見て日本語を習いだしたといっているように、韓国でのジブリアニメの影響力はすごいものがありますし。 (2006年11月05日 17時38分49秒)
okaaさん
>トラックバックありがとうございます。 >映画好きの独り言のようなものですが、 >よかったらまたたずねてください。 ----- こちらこそよろしく。 私も映画好きの屁理屈こね回しみたいなものです。 (2006年11月10日 00時16分44秒) |
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