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カテゴリ:07読書(フィクション)
『幻夜』集英社文庫 東野圭吾 解説の黒川博行がヨイショを書いている。曰く。「伏線の張り方が絶妙である」「ディティールが確かである。」後者はともかく、前者は私はそのようには感じなかった。 黒川は例えばこのように言う。「『幻夜』は『白夜行』の第2部だが、そのつながりは巧妙に隠されている。だからまったく別の作品だといって差し支えないが、読者に対しては幾つかのヒントが提示されている。それを見つけて美冬の正体に気づいたときはとても嬉しかった。」書き振りからすると、中盤あたりの曽我のつぶやきのことを示しているのだろうが、私は第1章ですでに美冬の正体に確信を持った。それどころか、この小説の構成についても、1章である程度見当をつけた。そうなると小説というものはあまり面白くない。それでも結局最後まで読んでしまったのは、東野圭吾の文書つくりの巧さによるところ大であろう。 第1章で私は何に気がついたか。 それは「文体だ」とだけ云って置こう。 70年代から90年代にかけて、二人の犯罪と昭和史を織り込んだ見事な『白夜行』には到底及ばない第2部であった。第3部の構想も作者はほのめかしているらしいが、そこまでやると喜劇である。止めたほうがいい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年04月29日 00時28分59秒
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