今日の朝日にこんな記事が載ったらしい。どうせURLを示しても全文は読めないので、無断で(^_^;)コピーします
「リストラは麻薬」悔いる声 常習化で会社の競争力失う
パナソニックが子会社の三洋電機を事実上解体する検討に入った――。ことし5月、パナソニックが吸収合併した三洋のテレビや洗濯機などの海外事業を売却・閉鎖する方向を打ち出したのを報じた新聞記事を、三洋の人事部の元幹部は複雑な思いで読んだ。
三洋の業績悪化が続いた2000年代前半、30代で人事部門の幹部に抜擢(ばってき)され、リストラに辣腕(らつわん)を振るった。技術職を営業職に配置転換したり、管理職を製造ラインに配置したりした。研修業務などをしていた子会社の人材会社を使って、出向先探しや自動車会社への派遣業務をさせ、三洋本体の人減らしをした。
人事部門の幹部に昇任してすぐ、当時の経営幹部から「こんなのがあるんや」と、渡された資料。01年度、松下電器産業(現パナソニック)が当時の中村邦夫社長の指揮で1万3千人にのぼる大量リストラをやった時の「マニュアル」だった。
「あなたの能力を生かせる職場がない」と退職を迫る手順など、いまの「追い出し部屋」につながる原点が網羅されていた。「これを見て勉強せよと。電機業界ではリストラ指南書の原点のようなものだった」
元の上司や同期から飲み会に誘われるたびに、「お前、自分が何やってるか分かっているのか」と罵倒され、「ほかに方法はあるのか」と怒鳴り返した。三洋をよみがえらせることができると信じて、「汚れ役」を演じたつもりだった。
だが、いまはこう思う。「リストラは麻薬だった。一時的には人件費などの固定費が減り、業績は上がる。でも同時に優秀な人材ほど見切りをつけて流出した。残った人も勤労意欲がうせ、開発の芽が摘まれた。企業の成長力がそがれて業績はさらに悪化し、またリストラに頼る。常習性が出て来るんですよ」
流出した技術者の一部は韓国や中国企業にスカウトされ、技術力をつけた各社にシェアを奪われるはめに。一方、三洋本体では「コスト削減」で派遣社員や外部委託が急増した。派遣社員らを送り込んだのは、皮肉にも、かつてリストラの先兵に使った子会社(人材会社)を傘下におさめた大手人材会社だった。「結局、正社員を退職させ、派遣などに置き換えただけ。競争力がなくなったのも当然だった」
昨年、妻子が住む関西の企業に転職した。大手企業などの人事部門から、年収2千万近いオファーもあったが、すべて断った。「いくら金を積まれても、人を切る仕事はもうやりたくなかった」 |
多かれ少なかれ、この10年様々な企業で起きたことである。いや、今も起きていることである。
大企業の幹部は情報も豊富で頭もいいのだから、「先を見通している」というのは、とんでもない間違いだ。こんな間違いは過去いくらでもあった。大きくはアメリカのベトナム戦争、イラク戦争。そのとき正しかったのは誰か。世界の人民大衆の「民族の問題に大国の干渉はするべきでは無い」という素朴な直感だったのではなかったか。
この人事部幹部に酒の席で(元上司や同期が)「お前、自分が何やってるか分かっているのか」というのは、当たり前の直感である。労働者の中にこそ、労働の源泉があるのだから、それを削るのは本末転倒である。しかし、労使協調を重ねた労働組合はそれを主張する力を持たなかったのだろう。いや、闘う労働組合ですら去年「赤字回避のためには賃金削減はやむ得ない」という経営の論理に抵抗できなかったと知人の書記長は言っていた。ただ、この労働組合は10年越しで職能給への移行を拒否している。一方リストラは引き受けている。やはり、正社員の意欲減退は大きいように私には感じる。
労働者の知恵と意欲を引き出す。それはリストラや能力給などの競争からは引き出せない。生活出来る賃金を保証し、未来を保証し、全ての知恵を活かす制度を作る。それは立派な「投資」だと思う。
それは、国の「再建策」にも共通するのではないか。