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2018年04月20日
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テーマ:本日の1冊(3696)



「記紀歌謡集」武田祐吉校注  岩波文庫

初版は1933年(昭和8年)。今年2月のリクエスト復刊で、手にすることが出来た。この一冊の中に、古事記と日本書紀の歌謡の歌と詞書のほほすべてが入っている。反対に言うと、それしか入っていない。校注はある、原文もある。しかし作品解説も編者の意見も何も無い。戦前では、これで十分だったのかもしれない。世間は、記紀から流用した「言葉」が溢れていた。


例えば、「撃ちてしやまぬ」という言葉は記紀両方にあるが、神武天皇の戦いの場面で出てくる言葉である。しかし、万葉集はもちろんのこと、支配者国選歴史書である記紀においても、「戦いの歌」は極めて少ないということがこの本を読んでいるとわかる。編者は、著書目録を調べると、学者バカぽい日本文学者だったが、この時期にこれを出版したのは、何かの意図があったような気もする(もしかして岩波茂雄の意図か)。


記紀には有名な歌が幾つもある。「出雲立つ」という冒頭第一句と並び、日本書紀には景行天皇の歌として


愛しきよし 我家の方ゆ
雲居立ち来も
倭(やまと)は  国のまほろば
畳(たたな)づく 青垣
山籠れる 倭し美(うるわ)し
命の  全(まそ)けむ人は
畳薦(たたみごも) 平群(へぐり)の山の
白橿(しろかし)が枝を  うずに挿せ
この子


古事記では息子のヤマトタケルの歌として出ている。書紀の方は、古事記よりも遥かに洗練度が増している。「国を偲ぶ歌」として、時代を超えるべき歌であると思う。


この本には「原文」も載っている。最初に倭国語があって漢字を使っていることが、読んでいてわかる。例えば「雲居立ち来も」は「区毛位多知区暮」と書く。そうであれば、「雲」も、「立つ」も、「来る」も、助詞の「も」も、古代日本語であることが実感出来る。又楽し。

2018年4月読了






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最終更新日  2018年04月20日 10時54分17秒
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