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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「逢沢りく(全2巻)」ほしよりこ 文藝春秋社 まるで芥川賞作家の小説のような、単館系映画の作品ような雰囲気を持っているが、流暢な文体も無ければ、凝った映像と編集もないマンガで、コレを表現出来たことに驚いた。 仮面夫婦の両親のもと、感情を無くした14歳の美少女りくを気持ち悪くなった母親が、大阪の親戚に一時的に預けるという話。ある意味母親が1番のモンスター。りくは合わせ鏡に過ぎない。 第19回(2015年)手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。島本和彦『アオイホノオ』、松井優征『暗殺教室』、荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』、大今良時『聲の形』、漫画・近藤ようこ/原作・津原泰水『五色の船』、コージィ城倉『チェイサー』、岸本斉史『NARUTO-ナルト-』、洞田創『平成うろ覺え草紙』を抑えての受賞だ。どんな傑作なのか見てみたかった。どうやら私と同様、審査員はまるきりの変化球にきりきり舞いしたようだ。見たことのない異作だった。 本来のペン描きを捨てて、鉛筆描き一つに絞った世界観。それは、小学生や中学生が漫画を描き始めて、最初にノートに始めたあの手触りである。そういう意味では、私も未だに持っているノートがある(少年の頃はマンガ家志望だった)。稚拙だけど、1番本気の魂が入った作品になる。 もちろん、ほしよりこは大人だから、逢沢りくから見た世界だけではなく、次第とお父さんやお母さんから見た残酷な世界観をも描き、反対に大阪のコテコテの世界も対になるように描く。「号泣必至」と宣伝文は書くが、途中で涙を忘れたりくのように、私の涙はなぜか出て来ない。自由自在に涙を出すことができていたりくは「大人ってとんでもないウソつきなんだから」と、5歳の時ちゃんに繰り返し云う。私の涙が出ないのは感動しなかった「印」じゃない。りくが途中で出せなくなったのも、心が動かなかったわけじゃなくて、反対に心が動かされてそれを表現する手段が見つからなかったためだと、誰でもわかるように、世界を作っていた。 人間は嘘をつく動物だと知っているりくは、いつの日か愛情表現でウソ(ギャグ)を言い合っている関西弁を自由自在に操れるようになると思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年06月28日 10時52分05秒
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