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テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
「黄昏の岸 暁の天」小野不由美 新潮文庫 今回は、十二国記最大の事件の「序章」である。事件が今までの物語の焼き直しになるのか?それとも新しい地平が広がるのか?は紐解いてみなくてはわからない(王朝の立て直しや盛衰はこれ迄も書かれたので、焼き直しの可能性も捨てきれない)。この巻だけでも「魔性の子」「風の海 迷宮の岸」「風の万里 黎明の空」「華胥の幽夢」とリンクしていて、10年越しの「構想」の下に書かれたことがわかる。 ところが、この巻から18年経ってやっと続きの全4巻が上梓された。ファンの想いは如何程だったか、私には想像だに出来ない。十二国にとって、28-30年などの時は一瞬である。読者も試されたのかもしれない。実際は、あっという間に200万部が売れた。蓋し、最今出版業界の奇観であった。‥‥いかん、又前振りが長くなっている。 荒筋や見どころは、ほかのレビュアーのそれを見てもらうとして、この巻でひとつ大きな前進を見せた綱目がある。それは「天とは何か」ということだ。様々な人物が様々に語っているが、私は以下の会話を引用してみよう。 「世界には条理がある。それに背けば罪に当たり、罰が下されることになる」 「でも、遵帝の行為を罪だと認めたのは誰なんだ?罰を下したのは?誰かいるはずだろう?」 「とは限らないだろ。例えば王と宰輔はその登極に当たり、階を昇る。陽子も昇ったろう。天勅を受ける、というあれだ。それまで知らなかったはずのことが、頭の中に書き込まれる。そのときに、王と宰輔の身体の中に、条理が仕込まれた、と考えることもできる。天の条理に背けば、あらかじめ定められた報いが発動するよう、身体の中に仕込まれていると考えれば、少なくとも遵帝を見守り、その正否を判じ、罰を下す決断をした何者かの存在は必要ではなくなる」 「御璽は?」 「同様に御璽に仕込まれていると考えることはできるだろ?」 「それでも問題は同じなんじゃないのか?全てを仕込んだー仕込むべく用意したのは誰なんだ?」 さてなあ、と六太は宙を仰いだ。 「天帝がそれだ、と俺たちは説明するわけだが、実際のところ、俺は天帝に会ったという奴を知らないんだよな‥‥」(288p) 500年生きている延麒六太と、この間まで高校生で景王となってまだ3年も経っていない陽子の、「現代的な」十二国分析は、多くの処が「当たっている」と私は見る。十二国世界は、彼らが観るように非常にシステマチックである。 ー「天帝」はいない それが、私の推論である。 えっ?それならば「誰が仕込んだんだ?」 おそらく、十二国シリーズ最後になっても、それは明らかにならないのではないか? と、私は推論している。 この最後の長編で、それにどこまで接近するのか?それが私的に最大の見どころである。結果がどうなろうとも、私は私の推論を最後の辺りに発表したい。 年表(加筆訂正) 1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 妻と3人の子仙籍に入る 才国遵帝「覿面の罪」により斃れる 1470年 六太4歳延麒となる。 1479年(大化元年) 雁国延王尚隆が登極 1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺 1700年ごろ 範国氾王登極 ーX96年 柳国劉王露峰が登極 ーX75年 恭国供王珠晶が登極 ーX 25年 舜国の王登極 ーX18年ごろ 芳国峯王仲韃登極 才国采王砥尚登極 X元年 泰麒 胎果として日本に流される X2年 才国采王砥尚崩御 才国采王黄姑が登極 X9年末 慶国予王が登極 X10年 泰麒 2月蓬山に戻る 戴国泰王驍宗が登極 X11年 泰王驍宗文州の乱に出向いて行方不明 泰麒 鳴蝕により戴から消える X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 芳国の麒麟卵果が触により流される X14年 5月慶国予王崩御 X15年(1992年?)陽子日本より来たる 10月慶国景王陽子が登極 X 16年 功国塙王崩御 慶国で和州の乱 X17年 泰麒 9月蓬莱国(日本)より帰還 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年03月11日 16時21分13秒
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