6859316 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

再出発日記

再出発日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

フリーページ

カテゴリ

お気に入りブログ

図書館予約の軌跡399 New! Mドングリさん

徘徊日記 2024年4月… New! シマクマ君さん

バラ鉢購入 New! abi.abiさん

韓国旅行2024春旅3… New! suzu1318さん

韓国の伝統菓子「オ… New! はんらさん

カレンダー

2021年08月15日
XML
テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:加藤周一


「都鄙問答」石田梅岩 加藤周一訳・解説 中公文庫 
この春、突然「日本の名著」シリーズに入っていた加藤周一訳・解説の「富永仲基・石田梅岩」(1984)の半分が文庫本になった。何故今なのか?何故本来加藤が好きだった富永仲基ではなく、こちらの方を復刊したのか。

帯を読めば、編集者は本気で現代に石田梅岩を再評価させたいと思っているようだ。もしかしたら、渋沢栄一ブームを見越してのことかもしれない。
曰く
「ウェーバー、ドラッカーよりも200年早い経営哲学」
「起業家必読」
「生産と流通の社会的役割を評価、利益追求の正当性を説いた商人道の名著」
とのことである。

石田梅岩1744年没。中百姓次男として生まれる。11歳で丁稚奉公、商家としては成功しなかったが、「心学」を唱え(1738「都鄙問答」)、死んでその教えは隆盛し、商家のみならず大名家老が修行するに至り、19世紀から幕末にかけてあらゆる階層に浸透した。

確かに、「心学」の全面的な現代語訳は他にないだろうし、親切丁寧な加藤周一の解説も現代に貴重だろう。確かに、私も加藤周一の隠れていた名論考がリーズナブルにポケットに入るようになったのは貴重だと思う。しかし、編集者は気がついていただろうか?本書は、かなり厳しい「石田梅岩批判」なのである。心学の特徴を全面的に紹介することは、同時に心学の持つ理論的な矛盾を突くことになるのだ。

加藤周一の論理展開は、少し専門的でかなり緻密なので出来うるならば手に取って読んで欲しい。申し訳ないけど、私は関心部分のみ感想を述べたい。因みに、加藤解説→翻訳本文の順番に読むことをお薦めする。
⚫︎梅岩は儒教の古典の章句を引いて、商家の日常の具体的な例に即して語った。それが今までの儒家とは違った。
⚫︎梅岩は問答を行った。本書で学者が(私流の解釈です→)「真理は不可知なのだから、孟子が性善説を言うのは、善でもあり悪でもあるということと同じことじゃないですか?つまり孟子のいう天(真理)は何とでも解釈できるのではないか」と質問すると、梅岩は「キチンと古典を読め」「天はある。それは修業しなくては得られない」と答えて一蹴している(106p)。なかなか突っ込んだ質問が多くて面白い。←もっとも、加藤は「だから大事な部分は全て悟りに集約されて、論理の飛躍、矛盾は無視されている」と根本的な批判をしている。つまりトンデモ宗教(学問)なのだが、問題はこれが幕末の保守層に多大な影響を与えていることだろう。
⚫︎「神儒仏トモニ、悟ル心ハ一ナリ」は、梅岩においては三教一致の主張ではなく、「悟ル心」から見れば、神・儒・仏の一致、不一致などは、二次的な問題に過ぎないという意味の感慨ではなかったか。この典型的な日本人は、天地自然と自己との一致という経験を支えとしながら、現世において、与えられた集団の中で、いかに生くべきかという問題に専念したのであり、その経験から出発して概念的な建築をつくり、そうすることで現世を、または自己の所属する集団を、超越しようとはしなかった。
⚫︎現実の中で義理と人情が対立するときは、義理の方が優先させれることが多かった。(略)日本人が自己の内部と外部の世界との緊張関係に究極的な解決を望むときには、梅岩流の解決に近づくことが多いようである。(←義理と人情を秤にかけりゃ義理が重たい渡世の掟)
←それでも解決しない時には、加藤周一はマルクス主義の教条主義、あるいは本居宣長の「神ながらの道」を選択するだろうという。どちらも、結局大きな失敗をした。とくに、超国家主義は本居宣長流を継承したが、説明つかなくて破綻した。現代、「日本会議」や靖国派などの超国家主義がこれと同じ概念構造を持っているように思えるのは、私の穿ちすぎだろうか?政府閣僚の圧倒的多数が「日本会議」の信者になっているのは偶然だろうか?





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年08月15日 17時23分07秒
コメント(0) | コメントを書く


キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504@ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月
・2023年11月
・2023年10月
・2023年09月

© Rakuten Group, Inc.