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カテゴリ:読書(ノンフィクション)
今日の朝日の「時流自論」に写真家藤原新也氏がちょっと耳に痛い事を「群れなす感情増幅の時代」と題し書いていた。
最近「王様のブランチ」で取材を受けて、氏は発見したという。「紙媒体とは異なる様々な増幅装置が機能している」インタビューのみではなく、映像やナレーション、音楽、言葉のテロップ、サブ画面での司会やタレントの反応「視聴者は音と文字によって増幅された情報を目と耳の両方から受け取りながら、サブ画面のタレントの表情を目に、自分の感情の在り方をその表情が指示する感情に同調させていく」インタビュアーのリアクションはさらにその増幅効果を高める。 情報や感情の増幅化現象はネット社会になり情報の重層化と倍速化したのが背景にあるのだろうと、藤原氏は言う。「世の中に流布される情報は人間が消化する量と速度を遥かに越えている。そして情報の飽食と氾濫の結果、大方の日本人の、外部情報と感情を融合させる大脳皮質の反応能力が非常に鈍くなっているように思える。赤子が集中力散漫なのは大脳皮質の反応能力が敏感すぎることによるわけだが、それとは逆の意味での赤子化が進んでいるということなのだろう。」 そういえば赤ちゃん、ボーとしている時間長いですね。では赤子化している日本人は情報に無関心になるかというと逆で、情報の飽食は情報を十分消化出来ていないため、情報への飢渇を生む。だからメディアはあらゆる方法を使って増幅信号を送り続ける。小泉前首相もそうやって人心をつかんだ時代の申し子だと藤原氏は言う。 「(このことによって)起こる現象は情報の炎上だろう」それはネットの中のみではなくマスメディアの中でも起こっている。「ある突出した情報にメディアスクラムが組まれて増幅報道されると、必然的に一つ一つの情報の訴求力が弱まるために、さらに情報に増幅がかけられ、なれのはてには発火、炎上する。その結果起きるのが情報の「燃え尽き」というべきものである。」「ここ数年、その突出情報の発火、炎上と燃え尽きのサイクルは倍速化しており、昨日までめらめらと炎上していた情報が、一夜にして灰と化すのを私たちは日常的に目のあたりにしている」それは9.11の影響もあるかもしれない、と藤原氏は結んでいる。 すくなくとも私にもこういう自負はあった。マスメディアや小泉劇場の増幅信号に踊らされてなるものか。確かに踊らされてはいない。でも私は情報過食の摂食障害者のように、外部情報の受信能力が低下しているのに情報に飢えて毎日ネットサーフィンを続けてはいまいか。そんな反省をした。 「発火、炎上、燃え尽き」この症状が進むとどうなるか。それはかえって世の中の動きを感じる能力の麻痺に繋がるだろう。 防ぐにはどうすればいいのか。一つには「繋がる」のがいい。同じ話題で「炎上」するのではなく、少しズレていく。政治から映画へ、映画から生活へ。或はその反対へ。一つは広がりを持つ。東西南北日本中へ。或は韓国へフランスへアメリカへ世界へ。一つは過去の文章を何度も使う。或は過去の賢人より智恵を借りる。全てはブログなら出来ることばかりだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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